第158話 ガジェット鉱山のダンジョン6
「ミ、ミハナ……」
「ミハナのお母さんの名前って…………」
不思議そうに振り返ったミハナ。
「もしかして…………、ダリアさん?」
「そうだけど……。話したことあったっけ?」
いぶかしげな顔で近づいてきたミハナに、ペンダントを渡す。
「えっ?? えっ?? なんで? こんなところに?」
混乱してアワアワと声にならない声を上げていたが、不意に頬に涙が伝う。
「お母さん……」
ミハナの母は、上級冒険者で、ガジェット鉱山のダンジョンから帰ってこなかった。
ミハナがペンダントを両手で包み込むように持ち、胸の前に抱いている。
ミハナが落ち着くまで、誰もしゃべらなかった。
「ニーナ。これ、どこにあったの?」
涙を拭うミハナは、ニーナをまっすぐ見つめていた。
「ここの草の中にあったんだよ」
見つけたところを示すと、ミハナが草を掻き分け始めた。
「お母さんは、3人パーティーだったの」
まず、他の人の持ち物が、残っているのかわからない。ダリアさんのように、ダンジョン内でも分解されないような持ち物を持っているとは限らない。もう10年ほど前のことだ。魔方陣での固定が弱く、時間と共に効果が薄れてしまって、分解されてしまったことも考えられる。
それに、同じ場所に落ちているのかもわからない。この陸地を出てしまえば、沼地なのだ。
カイト班まで含めて12名で探したが、見つけることはできなかった。
「皆さん、ありがとうございます」
「あと二人分、なにか見つかればいいんだけど」
「でも、もう昔のことですし、それよりも、お母さんはガジェット鉱山のダンジョンに入ったはずなんです。そのとき事務所にも、お母さんが入ったという記録が残っていました。それなのに、このダンジョンにペンダントが残っていたことの方が不思議で」
カイト班まで集まって、首をかしげている。
「えっと、ミハナのお母さんって、反乱が原因っていっていたよね」
ニーナが確認すると、ミハナが頷いた。
「そう言われたの。でも、今は、それも不思議で……。人が入っているダンジョンで、反乱ってするのかな?」
これには、カイトが答えた。
「あのときの反乱は、普通と違ったはずだ。俺たちも学生だったから詳しくは知らないが、急にダンジョンの構造が変わったらしい。それに巻き込まれたパーティが、なん組か戻ってこなかったと聞いている」
「ダンジョンの構造が変わる?? そんなことってあるんですか?」
声に出したのはユージだが、イアン班の6人とも不思議そうにしている。
「ガジェット鉱山のダンジョン以外では聞いたこともない。ミハナのお母さんは、その構造変化に巻き込まれたんだろうな」
「元々は、ここもガジェット鉱山のダンジョンだったってこと?」
「ガジェット鉱山のダンジョン事務所に記録が残っていたのだから、ミハナのお母さんがガジェット鉱山のダンジョンに入ったことは間違いない。荷物がこっちのダンジョンに落ちているんだ。そうとしか考えられない。どうやって構造が変わったのかはわからないが、構造変化でここに移動してしまったのだろう」
「あのときは、お父さんが何度も事務所に通って、お母さんの荷物だけでも見つからないかって、何度も聞いたんだ。エインスワール隊の人も探してくれたんだと思うけど、見つからなかった。お父さんは、エインスワール隊が手を抜いたんじゃないかって疑っていたけど、ここにあったんじゃ、見つからないよね」
ガジェット鉱山に入ることを目的にエインスワール隊になったミハナ。ダンジョンで妻をなくしたミハナの父は、猛反対した。
それが、こんな形で遺品を見つけるとは……。
「鉱山のダンジョンは、いまだに構造が変わるときがあるんだ。何をきっかけに構造変化が起こっているのかわからないから、特急ダンジョンのままなんだが。こちらのダンジョンに秘密かあるのかもしれないな」
「もしかして、レインの実家の近くのダンジョンができたのも、ガジェット鉱山のダンジョンが関わっているのか?」
「可能性は……あるな。さぁ、そろそろハヤト班のつくころだ。一旦戻ろう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます