第45話 元気に出発!!

 雪はやんだが、寒い朝。荷物をリュックに詰めて準備していた。下着などの着替えは最低限。なるべく『浄化』の魔法で対応する。

 お小遣いで防寒具を買い、携帯食料としてクロコダイルの干し肉を買い込んだ。


 朝御飯を食べ、今日の分のお弁当を作ってもらい、寮の前に集合した。

「よぉ~っし!! 出発しよう~!!」


「うん。ニーナ。行こう!!」


 元気に拳をあげるニーナに、レインが笑いかける。


「状況によっては、俺んちの手伝いをすることになると思うけど、本当にいいんだよな??」


「うん!! 楽しみ~!!」


 ユージの問いに、誰もが笑顔で頷いた。


「じゃあ、町を出るまでは、このまま歩こう」


 学園を出て、歩き始める。ニーナが弾むように先頭を歩き、それにぴったりと寄り添うレイン。カレンとミハナが続き、後ろから、イアンとユージが話しかけている。付かず離れずの距離にカイト先生がいた。


 商店街が見えてきた頃、カレンが「あっ!! そうだ!!」と楽しそうな声をあげる。

「美味しいもの買ってもいいかしら?」

「えっ、カレンちゃん。もう食べるの??」


 魔道具が出来上がってからは、必死に課題をこなしていて、ほとんど休みがなかった。カレンがちゃんと買い物ができるのは初めてかもしれない。


「まぁ、貧乏旅行だけど、困ったら稼げばいいし、いいんじゃないか?」


 ユージは、仕方ないとため息をついたが、イアンは気楽なものだ。薬草を採れば、最低限のお金くらい稼げる。まぁ、売るのはカイト先生にお願いすることになりそうだが。


「おい!! 楽しいのはいいが、気を付けてくれよ」

 カイト先生が苦言を呈しても、だれも気にしない。

「はぁ~い。カイト先生も、お土産忘れちゃダメだよ~」


 カイト先生から、奥さまの説得に苦労したと聞いているので、お土産だけは忘れないようにと、一応気にしている。まぁ、半分以上は、からかっているのだ。


「わかってる。俺が忘れるわけないだろ?」


「えぇ~。そうかなぁ~」


「奥さまもつれて旅行に行けば、よかったんじゃないかしら??」


 カイト先生が、カレンに小さなげんこつを落とした。


「バカいえ。彼女は、普通の人だ。エインスワール学園の生徒と一緒に旅行なんてできるか!?」


「あら? そうかしら?」


「お前らだって、かなり課題を進めているだろ? それだけ魔法が使えるのも、魔力の多さが関係しているんだ。魔力が多ければ、それだけ練習ができるし、多い魔力に任せて魔方陣を作ってしまえばいいから、魔方陣の形や記号に集中できる。お前らは、エインスワール王国の中でも特別だ。他の人も自分と同じようにできるとは思うなよ」


「へぇ~」

「ふぅ~ん」

「そうなんだぁ~」

「ほぉ~」

「みんな、すごいね」


 気持ちのこもらない返事に、カイト先生が呆れた顔をした。


「レイン……。お前は、もっと特殊だ……。魔力は減っていくが、魔力を奪うことができる。敵が、魔法を使う場合、とんでもなく優位に戦える。今までは、魔力食いの体質は厄介きわまりなかっただろうが、これからは、うまく使えるようにその体質と付き合っていかないとな」


「そうしたら、ニーナ達を守れる?」


「そうだな。唯一無二の能力として、この班にいなくてはならない人物になるだろうな」


 レインが、ニヤァ~っと笑った。上がった口角の隙間から、犬歯が見えている。

 せっかくのイケメンが台無しだ。


「レイン、顔怖い」


 ニーナの手を握ると、ニヤッとすることはあるのだが、さすがに突っ込んでしまった。


「あっ、あっ」


 慌てて、顔をペタペタと触る。

 

「もう治ったよ」


 ニーナが、レインと繋いだ手にギュッと力を込めると、また、ニヤッとした。


 屋台で買い食いをして、町を抜ける。そこで、お弁当を食べた。


「さて、走るか」


 少しでも早く移動するために、『身体強化』を使って走ることにしていた。

 ニーナが他の魔法に比べて、『身体強化』がうまく使えていたからだが。


「じゃあ、ミハナが一番前かな」


 回復魔法以外が得意ではないミハナにペースを合わせるために、ミハナを先頭にする。


「じゃあ、俺が、道案内しながら隣を走るよ」


 それ以外は、何となくバラバラとまとまって走り出す。ニーナはもちろんレインと手を繋いだままだ。走りにくいが、ミハナのペースはニーナにとって全力ではない。


 お昼休憩を挟みつつ、夕方まで走り抜いて、宿をとった。


 宿では、カイト先生用の一人部屋と二人部屋を三部屋。最後まで、レインがニーナと泊まりたがったが、最終的に男女にわかれて、ベッドをくっつけたところに三人で寝ることになった。

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