第44話 明日から長期休暇
空はどんよりと曇り、チラチラと雪が舞い始めた。
ニーナ達は、また薬草を詰んでいた。
ハート草をかご一杯に摘む。そこにカール草を一掴み加えて、「う~ん」と唸った。
「これ、乾燥させなきゃならないんだよね? この天気で、どれだけ時間かかるんだろう?」
みんなで空を仰ぎ見る。
「もうすぐ長期休暇……。ひとつでも多く課題を進めたいのに……」
課題20のポーション作成をしている。基本のポーションを作るのだ。
すでに1班はダンジョンに入っていて、2班も準備が終わり今日初めてダンジョンに入ると騒いでいた。それをバカにする1班もいつもの光景だ。
「魔法で乾燥させちゃダメなのか?」
ユージが、かごの中身を覗き込みながら呟いた。
「それだ!! 事務所で聞いてみよう!」
事務所のお姉さんに聞いてみると、うまくできれば魔法で乾燥させた方が成分が逃げなくていいらしい。
「広い場所が欲しいよね~」
「屋根があるところがいいわ」
「じゃあ、カーシャ先生のところを借りたら? 暖かいし」
ニーナとカレンの言葉に、思い付いたのはレインだ。
「レイン!! ナイスアイディア!!」
ユージが、レインの肩に腕をかけた。
「そうと決まれば!」
と、イアンが薬草がつまったかごを持ち上げた。
ニーナが、すり鉢を持ち上げようとすると、レインがすり鉢を取り上げてしまう。
「ニーナ、重いよ。僕が持つから大丈夫」
結構大きなすり鉢なのに、軽々と持ち上げている。
「もしかして、レイン、『浮遊』、使えるようになった?」
「うん。たぶん、みんなも使えるよ」
「えぇ~!! いつの間に??」
「ニーナが魔法の練習、頑張っているときだよ。絶対にダンジョンで役立つと思うんだよね」
「うぅ、まぁ、そうだけど……。私、使えない……」
肩を落とすニーナに、レインが微笑みかけた。
「いつも、僕がついているから、大丈夫」
「えぇ~!! そ、そうかなぁ」
「うん。ずっと、一緒にいるから」
「う~ん」
と、腑に落ちないながらも、ニーナは頷いた。
「カーシャ先生~。こんにちは~」
「あら、あら、あら、もう練習場は終わりよ」
「結界はいりません。ポーション作りたいんで、場所だけかしてください」
「あら、あら、それなら、構わないけど」
みんなで手分けしてポーション作成の道具をもって入る3班の姿に、カーシャ先生が思わず聞いた。
「あなた達、いい道具を持っているのね?」
「これは、借り物です。俺の兄の班に貸してもらいました」
「あぁ、人脈も才能だったわ」
なぜか、ため息をつくカーシャ先生。
その後、ユージが中心となって乾燥させ、みんなで順番にすり潰す。
カーシャ先生が、時々見に来て戻っていく。
すり鉢の中にきれいな水を入れて、魔力を流す。
ここで、『治癒』の魔法を発動すると効果が高いポーションが出来上がるらしくて、ミハナにお願いした。
熱の魔法で殺菌し、ろ過してポーションの瓶に詰める。
うっすら光る、基本のポーションが出来上がった。
「効果は十分そうね。これなら、合格間違いなしよ」
「やったぁ~。カーシャ先生ありがとう」
「あら、あら、まぁ。場所くらい、いつでも借りに来てちょうだいな」
練習場をあとにすると、ポーションの鑑定のために事務所に走り始めた。
昨日のポーションは、バッチリ合格した。
ついに、明日から長期休暇。カーシャ先生が旅行に行ってしまうので、今日中にあと一つ、課題に合格しておきたい。
ニーナは、右手を自分のお腹に向けて、からだの中に魔方陣を描くようにイメージする。
そのイメージのまま魔力を流し込むと、じんわりと暖かくなってきた。
「身体強化!!」
「ニーナちゃん。そのままジャンプしてみて」
カーシャ先生の声に合わせて、その場で少ししゃがんで飛び上がった。
「あぁぁぁ~!! 高い高い!!」
ユージの身長を軽く越え、バランスを崩す。
空中で、無理矢理捻って、体勢を立て直して、しゃがむように着地した。
「ニーナ、身体強化、うまいね。他の魔法と比べて、大きくなりすぎないっていうか」
「う~ん。確かに。私、これ、得意かも」
元々、魔力の多いニーナは、多少の魔力なら耐性があるのか、魔力制御がうまくできているとは思えないものの、『身体強化』は、うまく使えているようだ。
「ニーナ、すごいね」
レインが、手放しでほめる。
「そうかなぁ」
「課題21、合格おめでとう」
カーシャ先生にも、純粋に喜んで貰えた。
ついに、明日から長期休暇だ。旅行先も決まってる。ウキウキしながら、カーシャ先生と別れた。
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