第125話 特別課題7

 ドラゴンを解体し、牙や、爪、魔石に皮や鱗など、売れる部分と討伐を証明する部分を取り外していく。


「この鱗が、魔法まで防ぐのかな?」

 ナイフが入らなかったらどうしようかと思ったのだが、一応剥ぎ取ることができている。『身体強化』の状態でなんとかできているだけで、かなり固いことにはかわりない。

「防具になるのかな?」

「防具に加工するのも大変だけど、これ、固いから動きづらそうだそ」

「う~ん。確かに」

「盾を持っている冒険者もいるけど、ニーナは邪魔だろ?」

「両手塞がっちゃうじゃん」

 素早い魔法の発動に支障が出る。


 皮の剥ぎ取りが終わると、ニーナの興味は食べることに移動したようだ。

「ねぇ、肉は尻尾?」

「こいつの尻尾は筋肉質で固そうだぞ。腹とか背中とかのほうが旨そうじゃないか?」

「じゃあ、取り放題だね」

 かなり多めに切り出していく。

 誰も止めないので、どんどんと積み上がる。

 魔道具に入りきらないほどだが、『凍結』の魔法で凍らせて、そのまま台車に置いた。


「よし!! じゃあ、行くか!!」

 12階に戻り、花畑においてあった荷物を回収し、11階につながる階段を目指す。11階につくと、そこでテントを広げ始めた。鉄板を熱し、後は肉をのせるだけとなると、ガヤガヤと階段から声が。


「あれ? 早くないですか?」

 スワンが首をかしげて近寄ってくる。その後ろにはマシューが続いていた。


 3班が1班と別れたのは昨日の夕方。花畑にテントを張るという3班を見送ってからは、1日しかたっていない。


 そんなにドラゴンが弱いはずはないし、前回、ダンジョンからの帰りが、かなり遅かったことと関係があったようだ。


「だから、作戦はあるって。ドラゴン、食ってみるだろ?」


 1班は特別課題に挑まないと決めている。今回、卒業課題がクリアできれば、学園を卒業してエインスワール隊の仲間入りだ。

 班でパーティを組むエースパーティとなるわけではない。それぞれの能力にあった部署やパーティに配属される。


 だから、ドラゴンを自分達で倒すことはない。ドラゴンの肉も最初で最後かもしれない。


「ドラゴンか?? どんな味だ?」

 1班の他のメンバーも、集まってきて肉を見つめている。


「これが腹で、これは背中」

 大きな肉の塊を渡してきそうになるニーナに、マシューのみならず、皆が慌てる。

「ちょ、ちょ、ちょっと待った。急いでテントを張るから、待っててくれよ」


 本当に急いだらしい。3班が、全員分の肉を解凍して切り分けているうちに、テントがたっていた。


 ジューっという肉が焼ける音とともに、いい匂いが漂ってきた。

 軽く塩を振って、口に含む。


「ん? 旨いといえば、旨いのか?」

[ ]  腹の方が脂がのっているが、どちらも少し癖がある。

 香草で漬けて、焼いた方がよかったかもしれない。


「これ、やめられなくなる味じゃないかしら?」

 カレンには、はまったようだ。

 「う~ん」と言いながら匂いを確かめて、幸せそうに口に含む。もう一度、「う~ん」と繰り返していた。人によっては、堪らないらしい。


「う~ん。肉に関しては、労力に釣り合わない」

 鱗や魔石はかなり貴重そうだったが、肉はクロコダイルを倒した方が、おいしくて効率がいい。


 1班も微妙な顔で肉を口に含んでいた。

「ワイバーンは?」

 スワンとマシューの方へ問いかければ、マシューが口を開いた。

「まだ、巣を見つけてないんだ」

「湖の奥じゃないのか?」

 3班がワイバーンを倒したとき、湖側から仲間が飛んできた。

「湖は、一周したけど、巣はなかったぞ。湖のなかに浮かぶ小島はいってないけどな」


 湖をどうやって渡るかが、悩みどころらしい。ジャンプでは届かないし、魔法で湖面を凍らせるのは、広すぎて、ほぼ無理だ。


「いかだ、とか?」

 マシューがニーナを見て、固まっていた。

「12階の木を使って作るのか!?」

「そうそう!! ユージんちの薪を作るみたいに木を倒して、長めに切って繋ぐの。木に絡んでいる蔓とかで結べないかな?」

 ニーナが斧を振り回すような動作をしている。


「・・・剣しかありませんよ」

「ニーナ、この前は大剣を斧の代わりにしてなかったか?」

 斧よりも作業しやすいと大剣を振り回し、見学者を沸かせていた。

「うん! これなら、スパッといけるよ!!」


「えっと、さすがに自分達で木は調達しますが、大剣は貸してもらってもいいですか? たしか、魔力を大量に消費する大剣ですよね」


「うん。そうそう。魔力の量で切れ味が変わるから、大量に魔力をつぎ込んで、こう、バン!!!って」

 今度は、大剣を振る動作だが、あまり変わらないような??


「皆で順番に大剣を使って、明日はいかだを作りましょう。小島に渡るのは明後日ですね」


 1班は計画どおり小島に渡り、ワイバーンが1匹だけになるのを粘り強く待ち、一気に奇襲を仕掛けて倒すことができた。

 そのあいだ3班は、ダンジョン内にしか生えない薬草を摘んだり、お金になる魔物を倒したりして過ごした。

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