第162話 ガジェット鉱山のダンジョン10
クアルは目を細めてレインを観察していた。
「君、本当に魔力食いなのかい? その割には健康そうに見えるけど」
「何がいいたいわけ?」
レインが不快そうに顔を歪めた。
「だから、なんで魔力食いが、そんなに元気そうにしているのかって言っているんだよ」
「僕は、エインスワール隊だからね。魔力だって困っていないし、ご飯もたっぷり食べられてるよ」
「だから、それが何でだって言っているんだよ!!」
クアルは白髪の混ざるような歳。今よりも魔力食いへの差別が激しい時代に幼少期を過ごしている。
家族にすら見捨てられ、バルゼバブに拾われた。
まだ、魔法を覚えていない子供達を拐っては、魔力を奪い生きてこれたが、子供はすぐに弱ってしまうし、働けないのでお金は奪うしかない。
下っぱをダンジョンへいかせれば魔物を倒して肉を仕入れられるので、ありがたいことに食べるものはなんとかなった。
さらに魔物素材を売れば、多少のお金は手に入る。
しかし、身分証明ができないクアルは、ダンジョンに入ることができず、下っぱに頼らざるを得ない。初級の魔物しか倒せない下っぱの稼ぎでは、全員の生活費にするには足りなかった。
定期的に馬車を襲って金目のものを奪い、弱ってしまう子供の代わりを拐って来なければならない。
クアルにとっては、それが当たり前のことだ。
「よくわからないよ。僕は魔力食いだけど、それを生かすことができる。そのための仲間もいる。僕も皆を頼るけど、僕が皆のためにできることがあるんだ。おかしいことなんかないだろ?」
「なんでおまえばっかり、うまく生きているんだ?」
「おじさんが、誰も頼らなかったからじゃないの?」
ベルゼバブに拾われたが、それは頼ったわけではない。生きるために利用しただけだ。クアルは、犯罪組織の幹部としての生き方しか知らない。
「まぁ、僕は、運が良かったんだと思っているけどね」
「はぁ?? 腹立たしいヤツだな」
その頃には、カイト班が周りにいた男達を縛り上げていた。
「魔力が必要だ……」
クアルがギョロつく目で、獲物を探している。
レインを見て、イアンを見る。ニーナを見て、ニヤリと笑った。小柄なニーナは、子供のように見えたのだろう。
クアルが『身体強化』を使い、走り寄る。ニーナは逃げるわけでもなく、背中の大剣に手を伸ばした。
クアルが目前に迫ると、素早く大剣を抜き、その勢いで地面を叩ききる。クアルは直前で横へ飛び躱した。
「なんだ? この娘?」
「ニーナは強いからね。君らって、見た目とか、魔力食いとか、そんなことを気にしすぎなんじゃない?」
「はぁああぁあ?」
腹のそこから沸き上がる苛立ちを、ぶつけられる相手を探していた。
遠くで、遠距離攻撃に押されているエアルが目に入る。
自分に次ぐ幹部であるはず。魔力食いなのに、魔術師に苦戦しやがって。と腹の中で毒づく。
レインを視界に捕らえながらも、横移動していく。
「エアル!!」
キョトンとしているエアルの腕を掴むと、魔力を奪っていった。
「へっ? クアルさん? なんで?」
エアルは魔力が抜けて膝から崩れ落ちる。
「空気弾!!」
ユージらの魔法が飛んできたので、急いで避ける。
「エアル! 大丈夫か? あいつ、仲間じゃないのか?」とユージが騒いでいる。
「レイン? 近づいたら、魔力とられる?」
「触られなきゃ大丈夫。でも、空中に作った魔方陣は吸収されちゃうよ。気を付けて」
「わかった。なるべく遠距離だね」
「ニーナとイアンは、補助をお願い」
レインが、剣を抜き放った。
「へぇ、魔術師なのに、剣を使うんだ」
クアルが、ニヤニヤと笑う。
「うん。一度捕まって、情報を更新した方がいいんじゃない?」
「知らないのか? 捕まったときは、死ぬときなんだよ!」
「だから、それが古いっていっているんだけどね」
レインは剣を構えて走り出した。
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闇夜は小さな星に恋をする~落ちこぼれと言われようが、仲間との絆で強くなる! 魔法学校奮闘記!!~ 翠雨 @suiu11
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