第154話 ガジェット鉱山のダンジョン2
ガサガサと背の低い木を掻き分けて進んでいく。
左手の奥に白い建物が見えてきた。建物の前には道が延びているようだが、あまり使われていないようだ。
辺りには巨木が多く、枝葉に遮られてた地表は薄暗い。奥には、ガジェット鉱山が見えていた。
「え~!! わからなくなっちゃった」
「この辺か?」
「そんな気もするし、もっと遠い気もするし……」
レインの魔力探知は、方向がはっきりとわかるものの、距離はわかりにくい。魔力が近づいてくれば感じられるようだが、魔力が消えた場所の正確な位置は、わからないようだ。
「ちょっと探してみよう。あれって、ダンジョン事務所じゃないか? 入ってみよう」
左手の白い建物に向かう。このダンジョンは、近くの鉱山から名前をとって、ガジェット鉱山のダンジョンと呼ばれている。数年前に反乱して、それから一般の冒険者が出入りすることの出来ない特級ダンジョンに指定されている。
入り口はロープがかけられ、人を拒む気配があった。
恐る恐る扉をノックし、「すみませ~ん!!」と声をかけた。
特に返事はない。
「誰もいないと思うけど……」
魔力もないようだ。
扉を開けようと引っ張ってみても、びくともしない。
「う~ん?? 誰か来るかも」
レインが、近づいてくる魔力に気がつく。まっすぐとイアン班の方向に進んできているようだ。
「二人組かも」
しばらく待っていると、男が二人現れた。
「お前ら、こんなところでどうしたんだ?」
「エインスワール隊です。ベルゼバブを調査していて、この辺まで追ってきたと思ったのですが、見逃してしまって……。ダンジョン事務所に入ったのかなって思ったんですけど」
「ちょっと待て」
ドアを思いっきり引っ張って、鍵がしまっていることを確認すると、一緒に建物を回ってくれた。
窓もあるが、それぞれの窓には鉄格子がはめられて、人が通ることができない。鉄格子を引っ張って外れないかも確認していく。
「ん~。入れないと思うけど。一応、中も見ておくか?」
ダンジョン事務所の中は、荒らされた様子も、誰かがいたような気配もなかった。
「う~ん。どこに行ったんだろう……」
「俺たちは、数日おきに、ダンジョン事務所の様子を見に来ているんだ。昔は扉がこじ開けられているようなこともあったけど、最近はそんなこともないなぁ~」
「そうですか。ありがとうございます」
「もうちょっと奥まで行ってみます」
「まだ事務所にいるから、何かあったら来いよ。お前らも、暗くなる前には町に帰れよ」
お礼を言って、ダンジョン事務所を後にした。
「なぁ、レイン。ダンジョン事務所があるってことは、あそこにはダンジョンの入り口があるはずだけど、その中の魔物の魔力ってわかるのか?」
「ん?? そういえば、わからないかも」
「消えたってことは、ダンジョンに入ったってことはないか?」
「でもダンジョン事務所には人が入った気配はなかったけど……」
「カイト先生も、ガジェット鉱山のダンジョンは、誰も入っていないのに反乱の気配もないって言っていたし、前にレインの実家の近くにダンジョンができたとき、予兆もなくいきなり反乱して、しかも中級の魔物まで溢れていただろ?」
レインの実家は、今いる場所から直線距離だと近い。ガジェット鉱山を越えて反対側だ。
あのときには、ちょうど居合わせたレインが魔物の反乱に気がついたから大事には至らなかったが、ガジェット鉱山の近くでは、おかしいことばかり起きている。
「何か、関係があるんじゃないか……?」
「ダンジョン……か」
「そう思ってみれば、これって人が通っている跡なんじゃ?」
獣道のようだが、一部踏み固められて草が倒れたところがある。
「行ってみるか」
どこに続いているのか、わかりにくかったが、何度か間違えそうになりながらたどっていくと、大きな四角い岩が見えてきた。
「ダンジョンの階段みたいに見えるけど……」
「まさか……」
石の上に上ってみると、その内側には、下に続く階段が延びていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます