第5話 班の仲間と先生の役目

 イアンが、吹っ切れたように、レインの目の前に手を差し出す。レインはユージの手を離して、イアンの手をとった。

「ごめんね。君を攻めるつもりは、なかったんだ。僕は、一般人よりは魔力は多いよ。この学園の生徒のなかでは魔力量は少ない方かもしれないね」

 イアンは聞き取れないくらいの大きさで「1班に入れないくらいだから」と呟いた。


 次に手を差し出したのは、ミハナ。穏やかな笑みを浮かべている。

「私は回復魔法が得意なの。魔力以外で体調が優れないときにも、遠慮なく言ってね」


 最後は、カレンだ。口角をうっすら上げ、大人っぽい笑みを作っている。

「私は、魔法を使っている自覚はないわ。でも、魔力食いの貴方なら私の魔法にかからないのよね? 貴方となら本音で話せそうね」


 全員が話したところで、カイト先生が咳払いをした。

「まぁ、そういうことだ。お前らなら何とかなると思って組んだ班だ。俺はなぁ、このメンバーで68番目の課題まで合格して、このメンバーでエインスワール隊に入隊することを目指そうと思う」

「でも、カイト先生。68番目の課題に合格した班って、ほとんどいないって聞いていますけど」

 イアンは学園について詳しいようだ。


 頭をボリボリ掻いたカイト先生は、

「まぁ、そうだがな。でも、目指すのはいいだろ?」

「僕たちは、まず、67番目までたどり着けるかどうか……」


 ニーナは基本的な知識もなければ、基本の魔法も使えない。

 カレンは所構わず精神魔法を使うし、レインは魔力食い。問題だらけの班だった。


 ニーナが見回すと、ほんのりと皆笑っているように見えた。

 困難があるからこそ、協力しようという、暖かい空気が流れていた。


「さぁ、こうしていても仕方がない。今日から課題に取り組むのか? それとも仲を深めるために、他のことをするのか? これで解散ってこともできるけど、どうする?」


 カイト先生が次の行動を促すと、イアンがすぐに席を立って課題に手を伸ばした。ただ、カイト先生の言う意味が、ニーナにはわからない。他の子もキョトンとしているようだ。

 魔力を渡しやすいように、隣に座ったレインもポカンとしていた。


「ちょっと、待ってください!! 私、特別入学だから、この学校について何も知らないんです。授業って、先生がするのもじゃないですか??」


 カイト先生に目線をやっても、ニコニコ笑っているだけで答えてくれる気配がない。

 困り果てていると、イアンが課題の紙を広げながら話し始めた。

「エインスワール学園では、生徒の自主性に任せているんだ。全てのことを、班のメンバーの協力で乗りきっていかなければならない。先生は、危険がないように見ていてくれるのと、アドバイスを求めればヒントをくれる役目だ」

 そこで一旦説明をきって、カイト先生の方を見た。

「ですよね。カイト先生?」

 カイト先生は穏やかな笑顔で頷く。

「その通りだよ。ヒントは出せるから、困ったら聞くんだぞ。課題に限らず、相談にも乗るぞ。あと、ダンジョンの中に行けるようになったら、パーティとして一人立ち。ダンジョンの中にまでは付いていけないから、それまでに力と知識、仲間との連携を深めるんだよ」

 カイト先生の穏やかな声のような優しい暖かい空気が、ミーティングルームに広がった。

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