第7話 店の女との浮気

そして、店の女とプールデート。


いつも店では見慣れている裸。

水着をまとった彼女の身体は、ラインがはっきりと出ていて一段とスタイルが良く見える。

いつもよりエロく見えるのが不思議だった。


(隠れている方が裸より興奮するなぁ)


その帰りにその女とホテルに行く。

彼女は、すらっと背が高く、細い体にボリュームのある大きな胸と大きなお尻。

改めて直視する裸体に、俺は緊張している。


(男相手の風俗嬢がどんなセックスをするんだろう?)


ふと、こんな思いが浮かび期待で心が膨らんだ。

彼女の体を頭から足の先まで舌で愛した。

客相手に演技で出していると言っていたあえぎ声。

俺は、いつも壁越しに聞かされている。

激しく声を出しているが、それがどうしても演技に思えくる。


(これってマジ?それとも演技?)


俺は、こんな事を考えているうちに急に冷めてしまって男性機能が持続しない。


(やばい!・・・?)


さあこれから交わろうって時に、どうしても元気にならない。

なんともバツが悪い。

酒も飲んでないから飲みすぎたからという言い訳もできない。


(まいった・・・)


そのまま、お互い達する事もなく帰宅。

この後、この日の事である事件が起こる。

美紀に女とプールに行った時の写真を見られる。


「何これー?」


「なんだ?」


「この女、誰!」


(やばっ!)


「どれどれ?あ~これね。店のみんなとプール行った時の写真かな?」


(苦しい、いい訳)


「この女とあんただけしか写ってないじゃない!」


「そう?」


「他の人達の写真はどこ?一枚もないけど?」


(写真なんか撮らなければよかった・・・)


しつこく何回も何回も聞いてくる。

俺は、開き直る。


「そうだよ。おまえの思ってる通り。二人で行ったんだよ」


「ほ~らやっぱり」


「だからなんだって言うんだよ。おまえだって・・・」


俺は美紀の前の裏切り行為をほじくり出して、自分の行為を正当化しょうとする。


(嫌な性格だな)


「私の事は関係ないでしょ。あんたが浮気した事が許せないの!」


「なんだそれ、自分はよくて俺はダメって事かよ」


この日から、二人の間にどんどん溝が深まっていく。

美紀への気持ちがどんどん離れていくのがわかる。


「私、友達のところへ行くから」


「そうか、わかった」


俺は引き止める気持ちも沸かなかった。

今度は、荷物を全部まとめて出て行った。


「今回は戻って来そうもないな」


(あっけなく終りか・・・)


せっかく取り戻した愛も自分の犯した行為で無くしてしまう。

ぽっかり穴があいたようになる。


「俺、彼女と別れたんだ」


店の女に別れた事を告げる。


「そうなんだ。じゃ私が遊んであげる」


期待通りの言葉が返ってくる。


(やさしい女だなぁ)


俺は別れる原因になった女と遊んで気を紛らわしていた。

しばらくすると突然この彼女との別れが訪れる。


「ごめんね~私、結婚することになったの」


「マジ?彼と?」


「そう、だからもうこれっきりという事で・・・ごめんね」


「そっか・・・仕方ないか。俺には止める権利ないもんなぁ」


引き止めたかったが言えない。


「そうね」


(そうね・・・か、だよな)


「彼と別れて俺と一緒に・・・」


この言葉を発することはできなかった。


この女と一緒に人生を歩むという、そこまでの気持ちがなかったという事なのか?


(何故?好きなはずなのに引き止めないんだろう)


いろんな事が頭の中を走りめぐる。


(俺は、そこまで愛してないという事なのか?)


悲しい別れなのに冷静な自分自身に驚いた瞬間だった。

その話をした次の日に、女は店を辞めていく。


(あっけないな・・・)


俺は、いつも彼女にこんな話をしていた。


「この仕事の内容を知っている彼と結婚してもうまくいかないよ」


「そうかな~」


「風俗の仕事をしている事を知らない男と結婚するほうがいいよ」


「でも好きだから・・・」


こんな会話をしていた。


結局、彼女は彼と一緒にやっていく事に決めたのだ。

どうして引き止める言葉を一言も言わなかったのか?

彼女を迷わせてはいけない。

彼女にとって一番幸せな道なのか。

俺なりの優しさでもあったのかもしれない。

そう言い聞かせるしかなかった。


(格好つけてるけど、結局フラれたんだよな)


「負け犬の遠吠えだな、カッコわる!」


その後二人はどうなったか知らない。

幸せな生活を送っていればいいと思う。


「ふざけんなよ~この店は、触るたびに金とるのかよ~」


「こんなぼったくりの店は、訴えてやる!」


突然店の中で騒ぐ声が鳴り響く。

俺は、声のする部屋に駆けつける。

トラブルの多い女の部屋だった。


(また、こいつの部屋か)


しばらく様子を伺い、ドアを開ける。


「失礼しま~す。どうされました?」


女は、タバコを吸って客を睨みつけている。


「この女、脱ぎもしないで金を要求するし、触ると又、金!もう財布の中空っぽだよ」


「まあまあ、お客さん落ち着いて、違う女の子を用意しますから」


「いらねえよ!どうせ同じ様な女だろ?」


「そんな事ないですって」


「それに、もう金ねえよ」


「そうですか・・・」


(散々搾り取った後か・・・)


「払わなくてサービスしてくれるなら、いてやってもいいけど」


「いや、それは困ります」


そんなやりとりが続き、結局文句を言いながら店を出て行く。


(このまま交番に、行かなきゃいいけど)


トラブル処理やクレームの対応は、男性従業員の役目だ。

丁重に送り帰してから女の部屋に行く。


「おまえさ~もう少し上手く接客しろよ」


「ちゃんと、してるわよ」


「おまえが一番苦情多いんだぞ」


「だって、いやらしく触るんだもん」


「おいおい!それが仕事だろ?触らせてなんぼじゃないか!頼むよ」


「はいはい!いちいちうるさい男」


(むかつく言い方・・・う~ん、ここは我慢我慢!)


最近、うちの店は苦情が多い。

強引な料金の吊り上げなどで、ぼったくりの悪質店として警察に飛び込む客が多くなっている。

サービスが良い子は、苦情もなく客も納得して追加料金を払っている。

全くサービスしないでお金だけをとる悪質な接客をする女の子も少なくない。

常連客なんてものはなく、飛び込みの酔っ払いがほとんどだ。


ある日、その女が原因で店に警察の手入れが入る。


営業停止。


また無職になってしまう。


「またやられたな。さて次は何をやるかな~」


(のんきなオーナーだ)


「お前ら、すぐ次の店を始めるからしばらく待機してろ!他の店に行くなよ」


そう言いながら小遣いだと言って10万ずつくれた。


「ありがとうございまーす」


俺は、仕事を探すのも面倒なので、もらったお金と蓄えで遊びながら待つ事にする。


そして、経験した事のない職種が待ち受けている。

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