第184話 デリバリー運転手①

配達、デリバリーの正体は女の子の配達。

仕方なくホスト復帰までのつなぎのバイトを始める。


「ところで、そこの店は、わたしの店とは全く関係のない店なんだ」


「ふ~ん」


(そのほうが都合いいかな)


「うちみたいにやくざ経営じゃなく、全くの素人の夫婦が経営している店だから安心かもよ」


「そっか、さっそく明日にでも面接行ってくるよ」


「お~やる気満々じゃん」


「まあな」


次の日、あゆみから聞いた場所へ面接に向かう。

着いた所は、マンションかと思ったらおんぼろアパート。


(ここ?)


とりあえず俺は、階段を上ってノックしてドアを開ける。


「こんにちは~」


「誰?」


「あの~面接に・・・」


中を見ると大勢の人間がひしめいている。


「あ~聞いているよ。じゃそこに座ってスタンプ押してもらおうかな」


(え?いきなり?スタンプって何?)


「今日からできる?」


「あ・・はい」


「じゃあ、仕事しながら面接だ。面接の時間も給料発生してるからね、もったいないよね」


「はい」


(結構シビアな社長だな)


「これは、マンションのポストに投函用のチラシ」


「これって・・・」


俺は、チラシを手に取る。


「これは、手作りですか?」


「そうそう」


周りを見るとみんな慣れた手つきで版を押している。


「ここにいる子は、ホテトル嬢、運転手、ビラ投函専門。みんなでチラシ作りだよ」


「へ~合理的だ」


外国人もいる。


「君は車の免許持っているよね?」


「はい」


「じゃあ車で女の子の送迎をしてくれ」


「はい・・・でも車は?」


「店で車を用意するから、それ使って」


「わかりました」


「詳しい事は、この運転手の大川君に聞いて」


「はい」


「大川です。よろしく」


スタンプを押しながら挨拶する。


「よろしくお願いします」


「じゃ、こっち来て」


俺達は、隣の部屋に移動する。


「あ・・あんまりかしこまった敬語は使わなくていいからね」


「はい」


大川は、人の良さそうでさわやかな青年って雰囲気。


「そういえば、ホストやってたんだって?」


(えっ?)


「はあ、でも何で?」


「俺、あゆみの昔からの友達」


「あ~なるほど」


(どういう関係だ?)


「俺が人手足りなくて誰かいない?って、あゆみに話したら君の話が出てね」


「そうだったんだ」


「遊んでいる元ホストがいるからって・・・」


「あいつ、そんな言い方して・・・」


「きみは、あゆみと付き合っているの?」


「う~ん、まあそんなようなものかなあ」


「あはは・・・元ホストだもんな。真剣に付き合ってるわけでもないか」


「いや・・・大川さんまで元ホストなんて・・・」


(ズバズバと・・・ストレートな人だなあ)


「大川ちゃんでいいよ。みんなから、そう呼ばれているから」


「はい」


「じゃあ簡単に仕事の説明をするよ」


「はい」


「ホテルにも出張もするけど、主に客の自宅に出張するんだ」


「うん」


「チラシをマンションなどのポストに投函して、それを見て客が電話してくるシステムね」


「それがこのチラシですね」


「変な客が多い世の中だけど、女の子達はホテルに行くより安心らしいよ」


「へえ~何でだろ?」


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