第185話 デリバリー運転手②

「それは、自宅で身元も割れてるから女の子に悪戯しにくいんだってさ」


「ふ~ん、なるほど~」


「ただ隠しビデオ撮影は、よくやられるね」


「隠して撮影?」


「自宅だとカメラをゆっくり巧妙に設置が出来るからだろうなあ」


「ひどいなあ」


「女の子を気に入ったら次も指名をしてくる客がここは多くてね」


「へえ~」


「だから、この店は常連客が多いよ」


「そうなんですか~」


「だから、送迎も同じ所が多いから、一回行った家の場所を覚えたら楽だよ」


「なるほど」


「店が暇だと女が余るから、こちらから客の家に電話を入れてセールスをしているね」


「営業ですね」


「あの社長は口が達者で強引だし。ママもやり手だよ」


「ママ?」


「社長の奥さんの事、ママってみんな呼んでいるよ」


「お店のママって事だ」


「夫婦ですよね?」


「う~ん・・・籍は一緒じゃないみたいだけど」


「複雑な関係なのかな?」


「ここだけの話、ママにはちゃんとした旦那いるみたい」


「え?」


「でも家にも帰らないで、ここで寝泊りしているよ」


「へ~」


「俺達もあんまり詳しくは聞けないからよくわからないんだ」


「そうなんですか」


「でも、やさしくてね。みんなのお母さん的存在だよ」


「ふ~ん、いい雰囲気の店なんですね」


「じゃ話を戻すね。遠い所は車で一時間近く走る事もあるからね」


「へ~」


「だから遠い送迎の場合、送迎運転手は一人の女の子を乗せて、客の家から家に移動」


「その日は、その子専属運転手って事かあ」


「そういう事」


「じゃあ長い時間待つのか・・・」


「客にサービスしている間、俺たちは終るまで待っているというわけだ」


「客とやっている間待つって、なんか想像しちゃって変な感じですね」


「いろいろとヤッタ客との行為とか愚痴も聞かされるよ」


「あ~それも仕事の一つって事か・・・了解です」


「じゃ、遼ちゃんの車を見に行こうか」


(なんか会ったばかりなのにフレンドリーな人だ)


「はい」


(俺にもちゃん付けか・・・水商売の世界みたいだ)


駐車場に行くと軽自動車が置いてある。


「車、1人一台なんだけど、管理は自分でするんだよ」


「へ~」


「この車は遼ちゃんがする事になるよ」


「仕事以外も?」


「そう。自分で管理して、もし違反しても自分で払うんだよ」


「そっか・・・出勤したらどこに駐車するんですか?」


「路駐だよ。ただしレッカー移動気をつけてね」


「はあ・・・」


(路駐じゃ常に危険だなあ)


「取り締まりやるときは連絡はいるから、その時だけ動かせば大丈夫だよ」


「そんなもんですかね~」


俺は、鍵をもらってドアをあける。


「軽自動車なんてあまり乗らないからなあ」


(せま・・・)


隣の助手席に大川が乗ってくる。


「近場なら何人か乗せて、事務所と客の家へのピストン送迎だね」


「はい」


「遠距離の場合、下ろして待機だから客とセックスが終るまでポストにビラの投函作業ね」


「はい」


(セックスってまた、露骨に・・・)


「はいって言っているよ~敬語じゃなくていいよ」


「はい・・あ・・うん」


「遠くに行く場合、女の子とずっと何時間も車に乗っているよね?」


「うん」


「さっきも言ったけど、時間が長いから彼女達の悩みや相談、愚痴が聞くの大変なんだ」


「あ~そうでしょうね」


「でも面白い話もあるよ」


「へ~どんな?」



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