第105話 風俗のバイトの頃の女友達⑧

幸子はいつもの様に店で飲んでいる。

今日は友人と店に来ていた。

相変わらず酔い潰れている様子。

俺はヘルプの隼人に頼み事をする。


「隼人、今日は幸子を家まで送ってくれないかな?」


「はい、いいっすよ」


「相当飲んでいるからさ、送って部屋の中まで連れていってくれよ」


「部屋の中ですか?」


隼人は不安そうな顔をする。


「そ」


「大丈夫ですか?だいぶ酔っ払っていますけど・・・?」


「そうだなあ・・・酔うと男をほしがる女だから危ないかも」


「襲われたら、俺も今日はかなり酔っているので力負けしちゃいそうですよ」


「その時は、やっちゃえよ」


「も~冗談を言わないで下さい」


俺は真面目な顔をして隼人を見る。


「あいつ、お前のこと気に入っているみたいなんだよ」


「まじですか?」


「マジだよ」


「それって、尚更やばくないですか?。やめましょう」


「そんなこと言わず送っていってくれ。俺はまだ大事な客がいて帰れないからさ」


「まあ、どうしてもって言うなら送りますが・・・」


隼人は、最近お客が減って売り上げが落ちている。

俺は、そこに目をつけ隼人にある提案を持ちかける。


「なあ、隼人、送りついでにもう一つ頼みがあるんだけど・・・」


「何ですか?」


「マジな話なんだけど、いいかな?」


「はい、なんでしょう?」


隼人は真剣な表情で答える。

俺の真剣な顔つきだったので酔いも醒めた様子。


「あのな・・・」


「実はさっきの話、やっちゃえって話だけど」


「はい」


「あれ、マジだから」


「え?」


「お前、幸子の事どう思う?嫌いなタイプ?」


「スタイルもいいし、きれいな人ですね」


「それって、嫌じゃないってことだよな?」


「・・・はい」


「そっか。じゃあ話は早いな」


「もしかして、寝て自分の女にしろって事ですか?」


「酔っていても、察しがいいな」


「・・・・」


「俺達って、俺がホストになる前からの遊び友達だったんだ」


「へ~そうだったんですか」


「ホストになってから、客として深い関係になったけど元々苦手なタイプでねぇ」


「そうなんですね」


俺は、隼人の顔色を見ながら話を続ける。


(こいつ、引き受けてくれるかな?)


「男女の関係はあったけど、ある事件で店を辞めた時に縁を切ったつもりが・・・」


「この店で復活してしまったという事なんですね?」


「そ」


「わかりました。幸子さんは嫌いなタイプではないので喜んで引き受けます」


「そ・・そっか、サンキュ」


(おっと・・・即答か)


意外にもすんなり引き受けたので反対にこっちが戸惑う。


「それに、幸子なら売り上げに繋がると思うよ」


「俺もそう思いますし、助かります」


「そう言ってもらえると気が楽になるよ」


「こちらこそ、いいお客さんをもらって感謝です」


「お前、俺の後だけど気にならないのか?」


「そんな事言っていたら、今の客もみんな誰かしらの後ですから」


「まあ、そうだよな」


(確かにそうだ)


「たまたま、前の男の遼さんが近くにいたって事だけですから大丈夫ですよ」


「そっか」


(あんまりそういう事、気にしない男なんだな)


「そんな事より・・・」


「ん?何だ?」


「俺は良くても相手ですよ」


「幸子?」


「物じゃないんだから、簡単に譲り受けましたからって言っても納得しないでしょ?」


「それは、俺がうまくやるから安心しろ」


「大丈夫ですか?」


「大丈夫だって」


「了解です」


「ありがと・・・・」


(これで隼人に借りを作ることになるかもな)


「あと、遼さんを助けたつもりもないので気にしないで下さい」


「あ・・・ああ、わかった」


(こいつ、俺の考えている事を察したのか?・・・鋭いやつだな)



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