第104話 風俗のバイトの頃の女友達⑦

俺には前のホストクラブからの客の中に幸子と言う女がいる。

彼女は、翔子の風俗仲間。

彼女には申し訳ないが、この仕事だから相手していたと言ってもよかった。

俺は、極端にやせた女が苦手。

スリムっていうなら聞こえはいいが幸子は、骨と皮だけといってもいいくらいの風貌。


幸子もノーパン喫茶からソープに転職した一人だった。


「久しぶり~」


「・・・・」


(何で、こいつここに?)


幸子だと一瞬で気付く。

幸子には、あえてこの店にいる事は言ってない。


「あれ?忘れたの?あたしよ」


「誰だっけ?」


「何で白々しくとぼけるのよ」


「あ~お前か」


「何よ、愛想ないわね」


「いや、いろいろあってね~」


俺は、昔の事はとっくに吹っ切れていたが、わざと元気のないふりをする。


「あたしが来たんだから元気だしなよ」


「・・・・」


(元気でねえよ~)


幸子は、俺の両腕を細い両手でさする。


「どう?元気になった?」


仕方なく相手に合わせて答える事にする。


「よ~し、元気になったぞ」


「よしよし」


(よしよしって・・・)


「何で、ここにいるってわかったの?」


「翔子に聞いたのよ。遼が戻ってきてるよって」


「そうだったんだ」


(あいつ、いらない事を言いやがって・・・)


「戻るなら連絡してくれたら良かったのにぃ〜」


「戻ってきたというより、生活の為に仕方なくなんだよ」


「そうなの?じゃあ、またあたしが稼がせてあげる」


「そう・・・ありがと」


(また付き合わなくちゃいけないのか・・・腐れ縁か?)


幸子は、翔子とはまた違った意味で苦手な女。

お金払ってやっているのだから、相手をするのが当然だと思っている女。

気が強いが内面は弱い部分もある。

そこが可愛い面もあるが、ついていけない部分の方が多い。

親がやくざらしく、それが嫌で16の頃から家出をして歌舞伎町で一人で生きてきた女。

根性は入っている。

金で苦労ばかりしてきたはずなのに、金に物を言わせる性格。

俺は、好きにはなれなかった。

男と女の関係も、毎回おざなりの行為で済ませていた。

前の店の頃は、仕事と割り切って仕方なく家に通っていた。


「ね~今日うちに来てよ」


「う~ん・・・今日はちょっと」


「ボトルも入れてあげたし来なきゃだめ」


「・・・・」


(相変わらず、昔と同じだな)


かなりの寂しがり屋で、店に来た時は必ず閉店までいて一緒に帰ろうとする。

10回に1回くらいは答えていた。

前の店を辞めた時に縁を切ったつもりだった。

ホストを辞めるから、もうこれっきりなと言って別れた。

結構、自分勝手な酷い別れ方だった。

それなのに、ホストを始めたのを翔子に聞いて店にやってきたのだ。


「あんな別れ方して、また指名で来るのに幸子は平気なんだろうか?」


(まいったな~悩みの種がまた一つ増えたか)


幸子は、細かい事は気にせず自分に嫌な事はすぐ忘れる様な性格。

何もなかったかの様に俺に擦り寄ってきた。

しかし、幸子とは仕事と割り切って付き合う事ができない相手。

いつもの様に仕事帰りに店に来て飲んでいる。

幸子の席に着いていた隼人が立ったのを見て、そばに行って話しかける。


「隼人、幸子の話相手を頼む」


「いいですよ」


「ちょっとしつこくて、あいつ苦手なんだ」


「そうですか・・・じゃあ適当に様子見て席に戻ってくればいいですよ」


「わかった」


俺はそう言われても、ほとんど席に着かず隼人に相手をさせておく。


「遼さん、幸子さん呼んでいますよ」


「だいぶ飲んでいるだろ?」


「そうですね~ここの所、毎回無茶な飲み方していますもんね」


「そっか」


「ちゃんと相手しないと可哀想ですよ」


「隼人がずっと相手してやってくれよ」


「無理ですよ、指名者でもないのに・・・」


幸子は、毎回酔っ払って隼人にからんでいる。

俺は、しかたなく席に着いて家に帰す。

帰る頃は、会話もできない状態。


「あ~あ。疲れるな」


(ん?まてよ・・・)


俺は、突拍子もない事を思いつく。

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