第106話 風俗のバイトの頃の女友達⑨

「じゃあ送って行ってくれ」


「はい」


「たぶんだけど、部屋に入ると抱きついてくると・・・」


「いいですよ。後は自分が対応しますから気にしないでください」


「そう?わかった」


「幸子さんってエッチしないと繋ぎ止めてられないタイプって事なんですね」


「簡単に言うとそうだ」


「一つ問題が・・・」


「何?」


「指名の件はどうします?」


「それは、お前達がどうなるかわからないから後で考えよう」


(随分と先の事まで言うんだな)


「じゃあ、後の事は幸子さんの事もひっくるめてお願いします」


「オッケー」


俺は幸子をタクシーに乗せて隼人も一緒に乗り込ませる。

ドアが閉まるまで幸子は、まだ気付いていない。


車が動く瞬間にドアの窓ガラスが開く。


「あれ?遼、送ってくれないの?」


「まだお客さん残っているから」


「え~~~」


「隼人が送っていくからさ、ちゃんと部屋まで案内しろよ。寝るなよ」


「は~い」


(ん?・・・素直だな)


「じゃ、隼人頼むな」


「はい」


隼人は、俺に向かってウィンクする。


(あいつ、やる気満々じゃん)


さらに走り去るタクシーの窓から手を出し親指を立てている。


(面白い男)


後は報告を待つだけとなる。

実は、この裏にさらに企みがある。

俺は二人を送り出してから急いで店に戻る。

実は、幸子の友人の夏子を待たせている。

席に戻り夏子の隣に座る。


「さてと・・・」


「なあに?さてとって」


「いや・・・」


「何で、幸子を送っていかなかったの?」


「それは、夏子ちゃんがいるからさ」


「はあ?何それ」


夏子は、いつも幸子と行動を共にしている友人。

この日も幸子と一緒に、店に来ていたのだが指名のホストは、まだ決まっていない。


前の店では、同じグループで辞めていった三条の客だった。

幸子より稼ぎもよく金払いもよくて、店にも毎日のように通う女だった。

俺達にとっては都合のいい上客。

隼人が幸子とくっつけば、俺は夏子を指名させて店に来させやすくなる。

これが俺の企み。


(はたして上手くいくだろうか?)


「この後、どうする?」


「どうするって私も帰るよ」


「じゃあ飯でも食いに行こうか?」


「じゃあって何よ」


「では、是非、俺とお食事を!」


「幸子を先に帰して、私と?・・・遼くん何を考えているのかな?」


夏子の顔の表情は怒っていない。


「いいから、どうする?行く?行かない?」


(幸子に気を使って断られるかな?)


「何か、強引ね・・・でも強引な人好きよ」


「ほら、いこうぜ!」


「そうね~どうせ帰ってもコンビニ弁当だしなぁ・・・おごってくれるの?」


「当たり前!」


(よっしゃ!きたきた)


「じゃあ行こうかなあ」


「よし、決まり。行こう!焼き肉だ」


夏子は、無我に拒まなかった。

もしかすると俺の行動を察していたのかもしれない。

さて上手く事が運ぶかどうか。

楽しみだ。

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