第80話 同棲解消で命拾い?①

「由美さんどうですか?」


店に出勤すると隼人が聞いてくる。


「うん、まあ落ち着いたかな」


「よかったですね」


「サンキュ」


「お店は来ないんですか?」


「当分は無理かな」


「そんなに重傷ですか?」


「いいや、お前達に身体見られたから顔合わせづらいんじゃないかな?」


「え?俺?絶対見てないですからって言っておいて下さい」


「ははは、わかったよ」


京介にも、事の成り行きを話しておく。

あの後も由美の隣に住み続けているので、気にかけてもらっている。

由美の情報も入ってくるので俺にとっても都合がいい。


「由美ちゃん、真面目に仕事に行っているみたいだぞ」


「そうですか、よかった」


「香奈ちゃんにも迷惑かけてますよね?すみません」


「毎日元気ないみたいだってさ」


「そっか」


(でも仕事はしてるんだ・・・男相手で気が紛れるのかな?)


この状況で由美の事をそう考える俺は、自分で酷い男だと思ってしまう。


「たまには、店に呼んでやったらどうだ?」


「いや、来たらとは言ってるんですけど・・」


「そうなんだ」


「気まずいんじゃないですかね~裸見られたし」


「ばか!見てないって」


「ははは、冗談です」


「実は、少し見えたけどな・・・ってあれじゃ見えるだろ」


京介も笑いながら話す。


「ですよね」


「そんなに、気にしているのか?」


「それは関係ないでしょう」


「そっか、ならいいけど」


「でも俺の中では、もう離れようかと思っているんです」


「由美ちゃんと?」


「ええ」


「勿体ない!何でまた?」


「仕事に影響するし、もし未遂で終らなかったらと思うと・・・」


(当然だと思うけどなあ)


「だってお前、散々面倒見てもらって復帰させてもらい、やっとここまできたんだろ?」


「薄情ですかね~」


「そうだよ。お前、意外に冷たい奴だな。傍に居てやれないのか?」


「俺も辛いですけど、心を鬼にしての判断ですよ」


「まあ、俺がとやかく言う事じゃないけど・・・」


京介は、まだ何か言いたそうな雰囲気。


「例えホストやめて、傍に居てやっても結局同じですよ。前に経験していますし」


「そっか」


「きっとホスト相手じゃないと満足しないんでしょうね、ああいう女は」


「お前、きつい言い方するな」


「そうですかね?」


「だけど他のホストに行ったらもったいなくないか?」


「稼ぐ女なんですけどね~」


(そっか、京介さんの言いたい事は金か・・・)


「そうだよ、香奈に爪の垢を煎じてやりたいくらいだ」


「でもお金じゃないんですよね~俺の場合」


「ホストらしくない言葉だな。相原に聞かれたら怒られるぞ」


「あはは、ほんとですね。じゃあ京介さん、由美どうですか?譲りますよ」


「いいね・・・って無理だろ。香奈がいるし」


「あっ今一瞬考えた。マジだったでしょ?」


「あははは」


(絶対マジで考えたなこの人)


「ホストにとって仕事をしやすい、いい女と思ったんですけどね~やはり弱い女でしたね」


「最後まで優しくしてやれよ」


「あ・・はい」


(京介さんらしくない・・・ってこんな事言ったら怒られそう)


その後、由美はたまに店に来る程度。

前みたいに派手に金は使わない。


(この辺が潮時かなあ)


最初の頃は、俺から電話して呼んでいた。

しばらくして、俺から連絡をしないで由美からの連絡を待つ事にする。

ある日、隼人が席にきて、俺に耳打ち。


「遼さん、由美さんから電話です」


(やっときたか)



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