第152話 経営者の道①

それからオーナーは田舎へ帰る。


俺は、初めての経営者になる。

電話を受ける部屋。

待機場所が二箇所。

大所帯。

部屋がいくつもあるので、事務所に寝泊りしないと一人で回らない。

待機所の管理、電話番もする。

人件費削減。


「もしもし、遼?最近うちに帰ってこないのね」


美紀からの電話。


「うん、店が忙しくて寝泊りしながら電話番なんだ」


「忙しいのはいいことだけど・・・」


「ごめん」


「あんまり、無理しないでね」


「うん、わかった」


その後も忙しくて美紀の部屋にも帰れなくなる。


(この店1人でやるのはきついな)


「さて、どうしたものか・・・」


俺は、タバコをふかしながら寝転がる。

ふと一人の顔が浮かび上がる。


「そうだ、あいつに頼むか」


俺は、ホテトル嬢のあゆみに連絡をいれる。


「俺、遼だけど」


「あら・・久しぶり~元気だった?」


「うん」


「今、仕事何やっているの?」


「相変わらず歌舞伎町で身体張っているよん」


「実は、相談が・・・会えるかな?」


「うん、いいけど・・・いい話?悪い話?」


「悪い話ではないと思う。仕事の話」


「オッケー」


「じゃ」


(相変わらず気楽に話せる女だな)


待ち合わせ場所は歌舞伎町。

俺は、久しぶりに歌舞伎町の街に立つ。


「なつかしいな~」


歌舞伎町を離れてそんなにたってないはずなのに、すごく久しぶりに感じる。


「お待たせ」


あゆみは片手をあげて近づいてくる。

俺もそれに同じような仕草で答える。


「久しぶり」


「私の家に来る?」


「部屋借りたの?」


(随分いきなりだな)


「うん」


「へ~ずっとホテル住まいだったのに・・・」


「出世したのよ」


あゆみは、笑いながら答える。


(これは出世というのだろうか?成長だな)


俺達は、歩いてあゆみのマンションに向かう。

そして、ホテル街に入る。


「ここら辺って・・・」


「こっちよ」


「おいおい、この辺ラブホテルしかないじゃん」


「もうすぐだから」


そう言いながら、あゆみは腕を組んでくる。


「なんか久しぶりね」


「そうだね」


(変な感じ)


ホストの頃なら客の目を気にしてこんな所で腕は組まなかった。


(まっ、いっか)


しばらくホテル街を歩き続ける。


「こんな所に住む場所なんてあんのかよ~」


「静かないい所でしょ」


「確かに静かだけど・・・」


「たまに女の悲鳴がするけどね・・・あはは」


「おい、それって悲鳴じゃないんじゃない?」


俺は、思わず立ち止まってあゆみの顔を見る。

あゆみはニヤニヤと笑っている。


「ここよ」


「へ~こんなとこにマンションがあるんだ」


「ほら、あそこにもあっちにもあるでしょ?」


指を指す所を見る。


「ふ~ん、よく見ると意外にもたくさん住む所があるんだな」


俺達はエレベーターに乗り部屋に向かう。

降りた階は3階。


(ん?最上階じゃないんだ・・・)


俺の中では、風俗嬢が最上階を好むと勝手に判断している。




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