第126話 指名替えの出来ない二人目の女②
よく同じ様なシチュエーションにでくわす。
俺は、こんな時どちらに正直に相手の話をするかを判断しなくてはいけない。
俺は、席を離れてカウンター席で立ちすくみ考えている。
「う〜〜ん、悩むとこだ」
今回は、ちさとにする事に決める。
ちさとの場合は客として売り上げに協力してもらうつもりはない。
それも理由の一つ。
ちさとのテーブルに戻る。
「ちさと、あゆみ知っている?」
「うん、一緒の店だったから知ってるよ」
「あゆみもそう言っていたよ」
「店に来てるね。遼の客なんでしょ?」
「うん。会話とかする?」
(バレバレか)
ちさとは、しばらく黙って俺の顔を見つめている。
「何だよ」
「あ~わかった~ちいを口止めしに来たんでしょ?」
「ピンポン!そう」
(感がいいな)
「顔合せたらしゃべるよ」
「だよな」
「例の話はオフレコで」
「エッチしたって事?」
「おいおい!シー」
俺は、思わずちさとの口を手でふさぐ。
「もう忘れた」
「忘れた?」
「忘れてあげる」
「そっか・・・なんか複雑な気持ちだけど、助かる」
「だって彼にも言えないし、忘れるしかないもん」
「だよな」
一瞬、背筋がゾッとした様な感じになる。
「ホストクラブに来ているのも内緒だよ」
「え?そうなの?」
「ばれたら指名者を探しに乗り込んでくるよ」
「おいおい、物騒な話だなあ。」
(マジかよ!)
「あれ?話してなかったっけ?」
「それは、寝たらの話だろ?」
「やったじゃん!」
「・・・・」
(確かにやった)
「あははは、冗談よ」
「冗談きついよ」
「ちいね、遼の事好きなんだ」
「ん?どうしたいきなり」
「こんな気持ちにさせてくれたの遼が初めて・・・」
「こんな気持ちって?」
「こんな気持ちって言うのはこんな気持ちよ」
「何だよ、それ」
「まあ、いいからそれ以上は聞かないで」
「・・・わかった」
いつも笑顔のちさとの顔が沈んでいる。
「ありがとう、好きって言ってくれて嬉しいよ」
俺は真面目な顔をして答える。
「実はね・・・・」
「何?」
「もう少ししたら、来られなくなるかも」
「ん?どうした?」
「しばらく実家に帰る」
「そうなんだ」
「子供が、今度小学生になるしね」
「そっか」
「親と相談して、ちいがあなたのママだって言おうかって話しているの」
「えー大丈夫なの?」
「今ならまだ間に合うかなって」
「そっか」
「彼は?」
「あのチンピラ?」
「縁切るよ」
「できるの?」
「できない」
「だめじゃん」
「バックレよ。逃げなきゃ無理」
「そうか~うまくやれよ」
「しばらく来れないと思うし、ほっとするでしょ?」
「いや・・・彼からは逃れそうだけど、ちいに会えないのは寂しいよ」
「ちいもさみしい・・・」
(こいつのこんな顔見ているとやばいな・・・泣きそうだ)
「遼もがんばってね」
「うん」
こんな会話の後、二人は同じ席で飲む事になる。
あゆみに俺との事は、約束通り黙っていてくれたのであゆみの追求もなくなる。
そして、ちさとはいつの間にか店に来なくなり連絡が途絶える。
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