第110話 人生を変える二人目の女③
「何か問題ありますか?」
「お前は、いいとしても隼人の立場がなぁ」
「あっ!」
(ああ~そういう事か)
「隼人が、ヘルプのくせに先輩の客を盗ったんじゃないかと、まわりは見るだろう?」
「はい、そうですね」
「それも同じグループ内で何をやってんだと・・・」
「そっか」
「赤坂さんって、そういうの気にする人だから・・・プライド高いから」
「ですね」
「いちいち説明して回る訳にもいかないし」
「う~ん・・・店には呼べないですかね」
「裏でやるならいいが、隼人も売り上げを上げたいんだろ?」
「そうなんです」
「幸ちゃん、いい客じゃん。たくさん金を使ってくれる女だし」
「ええ」
「お前よほど嫌いなんだな。あんなに売り上げに貢献してくれる子を切るなんて」
「・・・・」
(金と割り切れない事を怒られるか?)
「俺から赤坂さんに話してやるよ」
「助かります」
(あれ?拍子抜けだ)
「まわりのグループの中で、隼人をいじめるやつはいないはず」
「そうですね、あいつは性格いいから」
「隼人は頭いいし、人当たりいいから大丈夫。悪い噂は俺達が否定すればいいんだしな」
「そうですよね。よかった」
「幸子を捨てて夏子を選ぶのか・・・お前も商売下手だな」
「そんなに言われると、もったいない気になってきますねぇ」
「両方は無理だったのか?」
「はい、それはちょっと・・・」
「あの子達、二人の関係性だと難しいか」
「多分・・・」
「お前ももっと勉強しないと出世できないぞ」
「はい、まだまだですね」
相原は、夏子は普通の会社員で幸子のほうが稼ぎがいいと思っている。
(これからの夏子への対応の事は黙っておこう)
相原と話が終わって隼人のもとへ行く。
幸子を送った時の状況を聞く。
「どうだった?」
「家まで送る途中、タクシーの中で幸子さんは、爆睡でした」
「よく家まで行けたな」
「近くまでは、行けたんですよ」
「うん」
「後は、マンションの名前でタクシーの運ちゃんに見つけてもらいました」
「そうか」
「家に着いてからも全く起きる様子なくて・・・」
「それで?」
「お姫様抱っこで部屋に連れて行きましたよぉ」
「軽かっただろ?」
「はい、異常な軽さで簡単に運べました」
「部屋の番号は教えてたあったから大丈夫だっただろ?」
「はい、ただ抱っこしたまま鍵を開けるのが大変で・・・」
「確かにそうだ」
俺は、その姿を想像しながら笑う。
「何とか開けて、靴も履かせたまま寝室を探しました」
「うんうん」
「見つけて、とりあえずベッドに寝かしつけましたよ」
「その間も幸子は起きなかった?」
「ええ、ピクリともしませんね」
「それより部屋の中、凄かっただろ?」
「あ~あれですね。確かに驚きました」
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