第171話 何故逮捕?④
ふと、目が覚める。
(今、何時なんだろ?)
窓の外にさらに窓が見える。
(まだ薄っすら明るいという事は・・・)
入り口側の柵の向こうに看守が座っている姿が、見える。
(高台になっている・・・あそこから全員の留置室を看視しているのか?)
看守の頭の後ろに時計がある。
(まだ4時だったのか)
留置室は真っ暗だが、留置場内は電気が付いていて明るい。
俺は天井を見つめながら考える。
何から何まで初めての事ばかり。
ここに来た時に中の様子ばかり気になって看守の話は全く頭に入っていなかった。
何時に起きるのか?
食事は?
風呂は?
毎日何をすればいいのか?
(いろいろ説明してたっけ)
そんな事を考えながら、また眠ってしまう。
「起床~~」
その大きな声とともに、部屋の中の電気がつく。
俺は、眠くて布団にくるまったまま寝ている。
看守の大声。
「おい、起きろ。時間がないぞ」
「・・・・」
(時間がない?)
寝ぼけながら、ぼ~っとしていると、また看守が近づいてくる。
「早く布団をたたんで、昨日出したところに収納しなさい」
「はい」
俺は、言うとおり急ぐ。
(あれ?・・・開いてる?)
気が付かなかったがドアが開いている。
昨日来た時と違って、中が明るかったので色々と見えなかった物が見える。
留置室の前には、長い洗面台がある。
「早く自分の洗面用具を持ってきて顔を洗いなさい」
「はい」
2,3人の男が黙々と歯磨きをして顔を洗っている。
俺の隣に立っている男は、上半身裸で顔を洗っている。
体中に刺青が入っている。
その男は、顔を洗い終るとタオルで身体も拭き出す。
俺は、その様子を手を止めて横目で見ている。
「お前も拭いたほうがいいぞ」
「あ・・・はい」
「おい!そこ話するな」
「は~い、すいませ~ん・・・たく~うるせえ看守だ。なあ、お前」
「・・・・」
俺は、言葉なくうなずく。
「さあ、そろそろ終わりだぞ。部屋に戻れ」
俺は慌てて部屋に戻る。
すると、次の留置室から男達が出てきて顔を洗い出す。
みんなテキパキと作業を終えて部屋に戻っていく。
戻った部屋から、順番にドアが閉められていく。
「おい、そこ正座して待つように」
(俺か・・・)
「はい」
「この中では、決まった時間通り規則正しい生活を送るからな。わかった?」
「はい」
「遅れるとみんなに迷惑がかかるからな」
「はい」
(時間がないとは、この事か)
小さな小窓が開いて、そこに朝食が置かれる
「はい、とって」
(これだけ?)
パンと白湯だけ。
(出されたものは食べなくては・・・)
ただのお湯・・・。
しかし不思議な事に、このお湯がとても味があって甘い飲み物に感じる。
(毎日これじゃ~痩せるだろうな)
朝食が終ると、留置場内にいろんな男達の声が響き渡る。
「便水お願いします」
「ジャー」
「便水お願いします」
「ジャー」
(便水って何?・・・)
俺は、しばらく考えて思いつく。
(あ~トイレの水の事?)
実は、起きてからずっとトイレを我慢していた。
衝立が低いから立ったままのおしっこは丸見え。
仕方がないので座りながら小をすます。
「あれ?水を流す所がない」
(確かに何も付いてないや)
「だから言わなきゃいけないのか・・・」
「便水おねがいします」
しばらく待っていても水が流れない。
(おかしい・・・何故流れないんだ?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます