第170話 何故逮捕?③

もう夜も遅く、警察の中は静かだ。

階段を上がって行く。


(上なんだ・・・留置場って地下かと思っていた)


まず一つ目の扉を開け中に入る。


「じゃよろしく」


「あれ刑事さんは行っちゃうの?」


「当たり前だろ、俺は、牢屋には入らないよ。ここからは刑務官の役目」


そう言ってさっさと行ってしまう。


「そっか」


(刑務官?・・・刑務官って警察官と違うのかな?)


「ここに荷物を出して」


「あ・・はい」


俺は、言われるままにすべての荷物を出す。

刑務官が細かく荷物の種類と数を用紙に書いている。


(細かいな・・・)


俺のジャージを念入りに調べている。


(何やってるんだろ?)


「ここが君の荷物の入れるロッカーだから覚えといてね」


「はい」


(でも、この人優しそうだ)


「じゃ着ている物や靴も脱いで、ここに入れなさい」


「全部ですか?」


「そう。この持ってきたジャージに着替えなさい」


「あ・・はい」


俺は、パンツ一丁になる。

ジロジロと看守は、人の身体を見ている。


(何か恥ずかしいな)


「傷や刺青はないね」


「あ、はい」


(あ~なるほど、そういう事)


「それから衣服の腰の紐は抜いといたからね」


「紐?」


(さっきゴソゴソやってたのはそれか)


「ゴムだけでズボンずり落ちないかな?大丈夫?」


「はい」


俺はジャージをはいて、ずり落ちない事を看守に見せる。


「だけどどうして紐を?」


「紐は危険だからね」


「危険?」


「紐で首吊りされちゃたまらないからね」


「ああ~なるほど・・・俺は、しないっす」


「一応規則だから」


「はい」


「後、このサンダルを履いてね」


「これダサくないですか?」


「君専用だから、どこに移動する時はこれを履くように」


「わかりました」


(これって便所サンダルだよな・・・かっこ悪)


「歯磨きやタオルは、持ってきたのを使うように」


「はい」


「布団は、ここから出して自分で敷くんだよ」


「はい」


「もう、みんな就寝しているから静かに作業を行う事」


「はい」


(そうだった。他にもいるんだよな)


俺は、突然その言葉を聞いて緊張が高まる。


「では、付いてきなさい」


「はい」


そこには、いくつもの留置室が並んでいる。


(お~まさしく檻だ)


「ここに入って」


俺は、布団を抱えながら小さな部屋に入る。


他に人はいない。


(これが独房ってやつ?)


どう見ても1人部屋って感じ。


「サンダルは揃えなさい」


「はい。すみません」


少しだけ曲がっていたサンダルを揃える。


「布団はこちらを頭にして敷いて寝なさい。布団はかぶらないで頭は見えるように」


「はい」


(相変わらず細かいな・・・)


「あの~トイレは?」


「そこにあるよ」


「えっ?」


俺は、思わずその場所を二度見する。

指差された場所には仕切りがない。


「あの~トイレはどこに?」


「そこだよ、そこ」


「どこ?」


「覗いてみなさい」


1メートルくらいのついたてのような物の向こう側を見る。



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