第175話 何故逮捕?⑧

裏口から出るとそこには、大型のバスが止まっている。


(これが護送車ってやつか・・・)


もう何人も乗っている。

手錠をかけられロープを腰にまわし逮捕者達が数珠繋ぎで護送バスに乗り込んでいく。


(そうか、犯罪者が何人もいるからか・・・逃げられたらおおごとだもんな)


警察官の緊張の意味が、ようやくわかる。

みんな声も出さず静かにじっと座っている。


「全員、会話しないで座っている事」


「・・・」


俺も数珠繋ぎの、後ろに繋がれる。


(これじゃ逃げたくても全員で逃げなきゃ逃げられないよなあ)


バスに乗ると確かにみんな同じような姿。

スウェットやジャージ姿にサンダル履き。

しばらく走ると次の警察署に着く。

また何人か乗ってくる。


(みんな、何で捕まったのかなあ)


そして、その後はどこにも寄る様子もなくしばらく走り続ける。

久しぶりに外の空気が吸う事出きた。

街の景色も見る事が出来た。

信号でバスが止まる。


「あ・・・」


なんか急に胸が締め付けられるように息苦しくなる。


(なんだ?俺、どうしたんだろ?)


通勤や通学のみんなが、楽しそうに歩いている。

そんな姿を見てて身体が熱くなり、やるせない気持ちになる。


(手を伸ばせばすぐ届く距離なのに、全く違う世界を見ているようだ)


車が走っている間、体をひねってずっと窓の外を眺めている。


(俺って本当に今、自由じゃないんだなあ)


そう思っているうちに大きな敷地内にバスが止まり、順番に降ろされていく。

大きな建物の中に入る。

広いワンフロアーの中に何十人と手錠の掛けられた人間がいる。


(なんか異様な雰囲気。これがみんな犯罪者なんだよなあ)


留置室とは違うが鉄格子の部屋がいくつもあって、そこに何人もの男達が座っている。

俺が逮捕されて一番辛い事が、この検察庁内にある事になる。


事件の内容によって、いろんな警察署からきた犯罪者が振り分けられる。

その部屋のイスが硬い木で出来た長いベンチシート。

一人一人の座る面積が狭い。

隣と密着しながら検事の取調べの順番を呼ばれるまで待つ。

冬だったので暖房は入っているのが、足元が寒い。


1人、また1人と名前を呼ばれて連れられて出ていく。

震えながら全員の調べが終るまで座って待つ。

身動きがとれない状態で何時間も待っている。


(う~~ケツが痛い)


足も組むことも出来ず、手をひざに置いて足を揃えて座っている。

俺は、ふと、視線を感じる。


(なんだよ?)


前の席のガラの悪そうな男が、ジッと睨んでいる。


(何、見ているんだ?)


俺は、なるべく目線を合わせないように下を向く。

それでも気になるので顔をちょっと上げた時。


「ガタッ」


男は、突然立ち上がる。




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