第130話 テレクラ①
「遼、今日も終ったら行くぞ」
営業時間も終わりにかかった頃、相原から声がかかる。
「どこですか?」
「例の所だよ」
「あ~例の・・・了解です」
(またか・・・)
「少しは上達したか?」
「まあまあですね」
「そっか」
「最近テレクラ、マイブームですね」
最近、相原と俺は仕事を終えて気分転換にテレホンクラブに行く。
うまくいけば客も拾えるかもしれない。
「店長、おはよ。今日もお邪魔するよ」
「よろしくね。毎日助かるよ」
「いい客でしょ?ははは」
この店では、既に顔となる。
朝方は男性客も少なく電話がなっても誰もとる人間がいないので従業員が女の相手する。
早朝に来店する俺達は、店に重宝されている。
客なのに店のサクラの様な存在になっていく。
店長の計らいで一時間の料金で好きなだけ居ていい事になっている。
朝方は、電話のとる競争相手もなく余裕で電話をとれる。
夕方のピーク時は着信の取り合いで、音が鳴ってから受話器をとっていては遅い。
着信のランプが光るかどうかの瞬間に、繋ぐテクニック。
ほとんどがテレホンセックスの相手。
お互いに自慰行為をやり、その様子を言葉にして最後までいって果てる・・といった流れ。
俺達は言葉だけで演技しているのだが、相手はマジでやっている様に感じる。
相手も演技している女性もいたかもしれない。
何十、何百人と電話の声を聞いているうちに演技かどうかの判別が出来る様になる。
一番簡単な判断方法は、本当にやっている女は、最後に達するとすぐに電話を切る。
満足すればもう用はないって事なのだろう。
切られた時、何か一人取り残されたようで虚しさだけが残る。
ある日、いつものように音がなる前に点滅ランプで電話をとる。
(おっ繋がった)
「もしもし」
「もしもし、こんばんは」
「初めまして、今日はどこから」
「新宿です」
「家から?」
「ううん、ホテル」
ほとんどは、自宅からの電話なのにホテルからは珍しい。
俺は、思わずおかしな質問してしまう。
「へ~ホテルに住んでいるの?」
(もしかして風俗嬢か?)
ホテルから電話でホテル住まいとは、一般的浮かばない。
ホテルかはなら旅行者で宿泊だと思うのが普通なのに、俺は発想がズレている。
バカな質問をしたと後悔。
「違う・・・東京に旅行で来て、泊まっているの」
「ふ~ん、そっか。それで今日はどうして電話したの?」
(だよな、普通)
「なんか1人で部屋いても寂しくて・・・」
「じゃあ遊ぶ?」
「電話で?」
「そう」
「何をすればいいのですか?」
(あれ?これ・・・いつものテレホンセックス女ではなさそうだな)
相手の会話にテレクラのやりとりに慣れてない感じがする。
「1人なの?」
「そうです」
「じゃあ部屋に遊びにいこうか?」
(少し言葉が東北なまりがあるかな?)
「ほんとに?」
「うん、行くよ」
(何かすんなり行き過ぎてやばいな)
「じゃあここに来てください」
女は、シティホテルの名前と部屋の番号を言う。
「オッケー!向かうね」
(大丈夫かな?・・・まっいっか!)
俺は、相手の女のなまりのせいか、危機感が少し薄れる。
個室を出て店の出口に向かう。
「店長、ちょっと外出。電話の相手に会いにホテルまで行ってくる」
「ホテルなんだ。いいカモがひっかかったかな?」
「どうかなあ・・・いきなり部屋に呼ばれて少し怖い気分だね」
「気をつけて」
「いってきま~す」
ホテルまで歩いて数分で着く。
「ここか」
エレベーターで部屋のある階に上がる。
部屋の前に着く。
俺は、ベルを鳴らすのに躊躇する。
「勇気いるな」
(ほんとに電話の相手がここにいるのか?)
「早朝だから間違っていたら失礼だしなあ」
色んな事を思い浮かべ、中々ベルを押す事が出来ない。
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