第134話 半同棲女との血だらけの部屋②

タバコに火を付け吸いながらしばらく電話を眺めている。


(絶対、怪しい)


「後は壁から外の配線か・・・」


(あれ?)


差し込み口に少し隙間がある。

差込口を触るとグラグラと盤が動く。


「おかしいな」


俺は、ドライバーを持ってきて盤をはずしてみる。


「何だこれ?」


見慣れないコードと黒いボックスが出てくる。


「もしかして、ブツブツ音がするのは、これが原因か?」


手にとって見てみる。


「これは何だ?」


コードをはずしてから電話を使う。

寮にかけてみる。


「西條、なんか喋ってみて」


音もなくなり何事もなく使用できる。

電話を切る。


「やっぱり原因はこれか」


手に取り色んな角度から観察。

眺めているうちにハッと思いつく。


「これって、もしかして・・・」


(盗聴器?)


「テレビで見た事あるけど、まさか・・・」


(夏子?)


「帰ってきたら問い詰めてみるか」


(今日は遅番か?帰りは夜中だな)


眠りにつく前に考える。

夏子は、テレビの配線もできない女。

こんな事が出来るほど器用ではない。

嫉妬をする女でないのは先輩の客だった頃から見ていて知っている。


「いったい、いつから取り付けられていたんだろう・・・」


よくよく考えるとブツブツ途切れるのは、ここ2,3日の出来事。


「やっぱり夏子に聞くのが一番早いな」


夏子の帰りは夜中なので、俺の仕事が終わってから部屋に行く事にする。


「とりあえずこれは、はずしておくか」


(ばれるかな?)


「まっその時は、その時だ」


俺は、接客中も終わってからの事ばかり考えてしまい、仕事に集中できない。


(どうやって切り出すかなあ)


(とぼけられたら、どう言えばいいか・・・)


そんな事を考えているうちに仕事が終わる。

俺は、急いで夏子の部屋に向かう。


「ただいま~」


「・・・・」


返事がない。照明はついている。


「寝てる?」


俺は、そっと夏子の隣に行き横に寝る。


「ん?おかえり」


「あ・・・ああ」


「どうしたの?こんな早くここに来るなんて、めずらしいじゃん」


「起こしちゃった?わるい」


「平気よ」


(さて、どうする・・・今、聞くか?)


しばらく沈黙の後、お互い眠ってしまいそうだったので思い切って話を切り出す事にする。


「あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・」


「ん?なあに?」


(どうやって聞けばいいんだ?)


「何?眠いから早く言ってよ」


「う・・うん」


(そうだ、物を見せよう)


「ちょっと待って」


「なあに?寝ないの?」


俺は、あの黒いボックスを持ってきて夏子に見せる。


「これ、何かわかるかな?」


「何?それ・・・」


夏子の顔が一瞬こわばった。

俺は、それを見逃さなかった。

そして、俺から視線をはずす。


「これ、なんだよ?」


「知らない」


「こっち向けよ。ほんとに知らない?」


「うん」


俺の目を見て話さない。

あきらかに動揺している様子。


「こっち見ろよ。ほんとに知らねえのかよ?」


今までにない強い口調で問い詰める。

しばらく沈黙の後、脅えた顔をして白状する。


「ごめんなさい。友達が付けてくれたの」


「何の為に?」


「・・・・・」


「なんとか言えよ」


「・・・・・」


何の目的なのか問い詰めても、別に意味はないとの一点張りで話にならない。


(単なるヤキモチなのか?)


俺はその友達って男なのか、女なのか気になった。


(なんか、きな臭いな)




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