第89話 ホストに導いた女⑥

相原の席に着く。

席に着くと相原はニヤニヤと笑っている。


「お前、上手く梶さんの客、ものにしたな」


「はあ、赤坂さんには怒られましたけど」


「ああ、気にするな。あの人は、女の一人や二人減っても平気さ」


「アリスには、調子を狂わさればかりで困っていますよ」


「あいつは、昔から変わっているからなあ」


「トントン」


相原の隣に座っている逆が爪でテーブルを叩く。


「ちょっと二人で他の女の話しないでよ。つまんな~い」


「あ、すみません」


 「私トイレ行ってお化粧直してこよっ~と」


「もう話終わりましたから」


「いいわよ、戻って来るまでに話を終わらせてね」


「すみません」


「いいよ遼、気にするな」


相原の客は、トイレに行ってしまう。


「それで何かあった?」


「それが今までの女では有り得ない事を言うんです」


「どんな?」


「店が終わって部屋に行くと、ここに来ないで他の客の所へ行けって言うんですよ」


「あはは、それは、いいや」


「抱いてやって指名の数でも増やして来いって・・・もう参ります」


「ホストにとって女にするには、ああいう女が一番いいのかもしれないな」


「由美とは、全く正反対なので戸惑ってしまいます」


「いろんな女に合わせられるようになって一人前だから頑張れ」


「はい」


アリスは、俺の事が好きなのか?・・・そんな疑問が湧き上がる。


この世界にいると、時々相手を好き、愛している、なんて感情が自分自身でもわからなくなる。

感情の入る相手も、入らない相手も同じように接しているからかもしれない。

アリスはこの業界では、福○ンと言われているのがうなずける。

俺は、それからどんどん売り上げが伸びていく。

一緒にいてホストとしてのアドバイスもあり、仕事もやり易いおかげなのだろう。


(アリスは嫉妬心ってないのだろうか?)


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