第114話 人生を変える二人目の女⑦

「なっちゃん、遼が言ってたぞ」


「え?何を?」


「なっちゃんと一緒に住みたいな~ってさ」


「え~マジ?私と?」


「うん」


「だって私、実家だし・・・」


「部屋を借りて住もうかなぁとか言っていたよ」


「へ~ほんと?」


「でも、借金あるからしばらくは無理だなあって嘆いてた」


「そっか・・・」


「なっちゃん、出してあげれば?」


「だって正直なところ、もうお金ないんだ」


「お金ないの?稼ぎいいんだろ?」


「今の仕事じゃお金貯まんないよ」


「あ、そっか。今OLさんだっけ?」


「うん」


「じゃ前の仕事に戻ったら?」


「う~ん、せっかく普通の仕事に戻れたのになあ」


「でも飲みに来たいんだろ?」


「うん」


「それなら話は早いじゃん」


「そっか、遼が私と住みたいってか・・・」


夏子は考えている。


「仕事変えれば飲みにも来られるし、部屋代も出せるし一石二鳥だろ?」


「そうね~考えてみようかな」


相原が夏子の席を立ったのを見てすかさず相原のそばに行く。


「どうでした?」


「あの分だと、すぐ風呂屋に戻るな」


「そうですか」


「明日にも行っちゃうんじゃないか?」


「まさか」


「あとは、お前次第だな。頑張れよ」


「はい、ありがとうございます」


店が終わる頃、俺は夏子の席に戻る。


「じゃ帰ろっか」


「うん」


「夏子、あのさ~」


俺は、話があるような言い方をする。


「うん、何?」


「いや、いいや」


「何よ~気になる~」


「今日は、いいや。また次の時に話すよ」


(これで相原さんの話していた部屋の事だと思うかな?)


「変なの〜」


次の日、夏子は店に来ない。

連絡もない。

実家なので電話もしづらくて、そのまま1週間が過ぎる。


(おかしいな)


仕方なく、しばらく様子を見る事にする。


(もしかして・・・)


店がオープンして待機していると、隼人が話しかけてくる。


「夏子さん来なくなりましたね」


「少し思わせぶりな言葉をかけといたけど」


「へ~何をですか?」


「相原さんが、言ってくれた事だよ」


「っていうと?」


「一緒に住もうって部屋の話だよ」


「ふ~ん。うまくいきそうですか?」


「それが、これからダメ押しっていう時に連絡こなくなってね」


「いなくなっちゃたんですか?」


「どうかな?まだ俺から連絡してなくてね」


「連絡したらどうですか?」


「そうだな、最後の詰めの段階だからな」


「そうです。プッシュプッシュですよ」


「明日にでも電話してみるよ。心配してくれてありがとな」


座って待機していると主任に声をかけられる。


「遼、指名が入ったぞ」


「え?誰?」


今日は、誰も来る予定がなかったので急いで席に向かう。


「おはよ。パパ」


(パパ?)


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