第115話 人生を変える二人目の女⑧

そこに夏子が席に座っている。

夏子が突然来たのだ。


「あれ?どうした?」


「来ちゃった」


「ちょうど、隼人と噂していたとこだよ」


「そうなの?久しぶりに飲みに来たんだ」


「ほんとだよ。連絡もないし心配したよ」


「ごめん。忙しくて」


「パッと見でわからなかったよ。いつもと違って派手な格好じゃない?」


(この格好はもしかして・・・)


「あ~これ?そう?今日は仕事帰りなんだ」


「そっか」


(OLの格好じゃないな)


「久しぶりにパパの顔を見に来たの~」


「そのパパって言うのやめろよ。酔ってる?」


「いいじゃん、さ~今日は飲むよ~」


「飲むよってお前、金あるの?ツケも溜まってるし」


「うん、大丈夫。ほら」


夏子はバックの中を広げ剥き出しになったお札をわしづかみにして見せる。


「おい、やめろよ」


「今日、稼いできちゃった」


「稼いでって?」


(もう、転職したのか?)


「今日の初任給よ」


「初任給って仕事変えたの?」


「そう」


「もしかして・・・」


(こいつ、行動早いな)


「あはは、また前の仕事に戻っちゃった~」


「何でまた?」


白々しく聞く。


「だって稼がないとここに来られないじゃん」


「そっか」


(なんか簡単に事が進んだな。相原さんの言う通りだ)


相原に報告する。


「なっ!言った通りすぐ行っただろ?」


「相原さん、うまくいき過ぎてちょっと怖いです」


「後は、情入れないようにして根こそぎ引っ張れよ」


「情ですか・・・そうですね」


「何だ何だ、またか?」


「・・・・」


「お前はすぐそうやって甘い事を考えているからダメなんだよ。この世界じゃすぐ落ちるから気をつけろ」


「はい、わかりました」


(相変わらず手厳しいな)


その後は、すべて簡単に話が進む。


「遼、部屋を借りるお金貯まったよ」


「さすが高収入。早いな」


「そんな言い方しないでよ」


「ごめん。じゃ明日から部屋探しだ」


「私、仕事だから任せるね」


「オッケー」


俺は、すぐに寮の近くの部屋を見つける。


(ここならすぐに寮に歩いて帰れるな)


俺の名義で、部屋を借りる。


「夏子、一緒に住むって言っても毎日は無理だよ」


「わかってる」


「寮で電話番とか掃除もしなくちゃだから」


「そんな事、いちいち説明しなくていいから」


俺は、しつこいかと思ったけど念を押す。

また自殺騒ぎになっては、たまったものじゃない。




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