第191話 運命の出会い②

「おはよ~今日はよろしくね」


「おはよ」


子供のような無邪気な笑顔で車に乗ってくる。

その姿を気付かれないように目で追う。


(なんてかわいいんだ)


「車はどうしたの?」


「車検なの。代車で来たけど慣れない車だから、今日は送ってもらおうかなって」


「あ~なるほどね」


「ごめんね」


「いや、別に謝らなくていいよ。これが俺達の仕事だから」


「あはは、そっか」


「こんな事を言うと店の他の女の子達が怒るかもだけど・・」


「なあに?」


「マイちゃんは、他の子のように下品な言葉使いや疲れた感じの雰囲気が全くないね」


「そう?」


「そうだよ。かわいいしさ」


「あら、お口が上手いのね。ありがとう。何かお礼しなくちゃいけないかしら?」


そういって舌を出す。


「・・・・」


(やばい!この感じ・・・惚れてしまいそう)


ときめいている自分が、妙に恥ずかしくなる。

動揺を悟られないうちに急いで車を発進させる。

あっと言う間に目的地に着く。


「じゃいってくるね。待っててね」


こっちを振り返り手を振った後、小走りで去って行く。

俺は思わず後姿に手を振っている。


ハッと我に帰る。


(俺、何やってんだだろ?彼氏にでもなった気分か?)


そう思いながらも、待っている間は夢心地。

しかし、戻ってきたマイを見て現実に引き戻され我に帰る。


マイはホテトル嬢。

やることはしっかりやってお金をもらってくる。

車に乗ってくる。


「おまたせ~、さあ次の家に行きましょ」


そう言って、車が動き出すと髪を束ねて化粧直しをしている。


「了解」


(こんなに普通なのに、客とはしっかりやる事してきたんだよな)


マイの場合は、お初の客でもかなりの確率で、次は指名に変わる。

今日、最初に行く客は飛び込みの客だが、その後はすべて予約の客。


「後の客の家は、道順を教えるね」


「オッケー」


「次はオンボロアパートなのよ」


「ふ~ん」


「でもたくさんチップくれるからね」


「そう・・・」


(やっぱり金か)


マイは、規定の料金以外にチップも多いらしい。


(どんなサービスしているのだろう?)


俺の心の中に、面白くない気持ちが湧き上がっている。


(これってヤキモチ?)


結局、今日だけで5人の客の家をまわる。


(五人も相手・・・すげえ)


「じゃあ。これ店へのバック。ママに渡しといてね」


「事務所に寄って行かないの?」


「うん、アゴも身体もヘロヘロ。眠くて・・・やりすぎかなあ、あはは・・・」


「ははは・・・」


(あごも?やりすぎ?マイの口から出る言葉とは・・・)


軽いショックを受ける。

この後の自分の放った言葉に後悔する事になる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る