第192話 運命の出会い③

「五人も相手したもんなあ~」


「やだ~ヤリマン女みたいに言わないで」


「いや、言ってないよ・・・」


「じゃあね」


金を俺に渡し、サッサと自分の車に向かって行く。

帰りは、笑顔もなく振り返りもしない。

手も振らないで去って行く。

それがすごく心寂しい気持ちになる。


(怒ったのかな?)


マイにとっては、何でもない行動だったのかもしれない。

なのにすごく気にしている俺がいる。


それから、しばらくマイを乗せる事はなかった。

俺は、ずっとあの別れ際の事を気になっている。


(俺、かなり気にしているな)


マイの送迎する事があっても運転手がたくさんいるので俺にまわってくる事は滅多にない。

彼氏がいるのは、ママや社長の会話によく出てくる。

聞くたびに、わかっていても胸が痛くなる。


(彼ってどんな男なんだろう?)


日に日に気になっていく。


あゆみと一緒に住んでいるくせに他の女を気になっている。


(俺は、ひどい男だな)


そう思いながらもどんどん気になっていく。

そして、またマイをのせる機会がやってくる。


あの日の一言で怒っているのかどうか気にしている自分がいる。


(気の小さい男だな)


自分で自分が情けない。

しかし、この後マイの様子を見ていつまでも気にしていた自分が恥ずかしくなる。


「おはよ~」


「おっす」


「久しぶりね」


「だね・・・」


俺は、この前の事を気にしていて返事も暗くなる。


「この前送った時は、疲れていたみたいだね」


探りの意味を込めて聞いてみる。


「この前?・・・ああ~あの日?家に着いてバタンキューよ」


「かなり疲れていたんだね」


「もう帰る時の記憶がないくらい。眠かったあ」


「そっか」


(俺の言葉は、関係なかったか・・・)


俺は、大きく息を吐く。


「どうしたの?大きなため息なんかついちゃって」


「いや・・・何でもないよ」


(ホッとしたなんて言えないよなあ)


乗せるのが二回目だという事もあり、気が楽になったせいか車の中で会話がはずむ。

しばらくして会話が止まり不自然な沈黙。


タバコに火をつけて吸う。


(どうしよう・・・彼の事を聞こうか?)


緊張で手に汗がにじんでくる・・・。


(俺、変だ)


そして、思い切って彼の話を聞く事にする。


「あのさ・・・聞いてもいいかな?」


「ん?なあに?いいよ」


「彼って、付き合ってどれくらいになるの?」


「彼?もう3年かなあ、でも2年は遠距離恋愛なの」


「ふ~ん・・・遠距離かあ、遠いの?」


「うん、北海道」


「じゃ中々会えないんだね」


「そう、だから私が会いに行ったり、彼が来たりしているの」


「そっか」


「月にニ、三回くらい行っているかなぁ」


「へ~飛行機代が大変じゃん」


「そうそう、だから稼がないと」


「この仕事は、彼は知っているの?」


「まさか~知らないわよ」


「だよなあ」


「だから、彼が来ている時は仕事できないのよね~」


ほんとに困ったような顔をして言う。


「なるほど・・・」


「だから働ける時に、しっかり稼いでおかないとダメなのよ」


「彼と会う為に身体を張って働いているって事か・・・彼を好きなんだね」


「ん~どうなのかしら」


彼女は、否定的な返事をする。


(あれ?あやふやな返事だな・・・彼との関係、少し冷めてきているのか?)


俺は、勝手に良いほうに解釈する。


「あんまり会えなくて、寂しいんじゃない?」


「そうかも。でも・・・」


俺は、その後の言葉が気になる。


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