第199話 接近③
「はっ!」
(いつの間にか寝てた?)
俺は慌てて起きる。
「どうしたの?」
マイは起きている。
「うっかり寝ちゃった」
「よく眠っていたよ」
「あれから誰も来なかった?」
「うん、多分。私も途中ウトウトしていたからよくわからないけど」
起こされなかったという事は、この部屋に誰も来てないのだろう。
「この部屋の子は?」
「鍵が開かないから他の子の部屋で飲み続けてそのまま眠っちゃってるのかもね」
「そっか・・・大丈夫かな?」
「私が鍵を持っていたから部屋に入れなかったと思う」
「その子に悪い事したね」
「そうね。悪い事しながら悪い事したんだね。気持ちよかったけど」
マイは微笑みながら言う。
「あ・・・はは・・・」
「ちゃんと覚えている?」
「う~ん、最初のほうはちょっと・・・」
「あ~ひどい。酔った勢いで私を犯したんだ」
「まさか~そんなはずないじゃん」
「だって覚えてないなんてひどい。私の身体をもて遊んだんだあ」
マイは手で顔を覆う。
(えええ!マジ?この流れで泣くの?)
「ごめん、ほんと。途中からは覚えているって」
「・・・・」
「俺、マイが好きだったから、抱けてうれしかったよ」
「ほんと?」
「ほんと、ほんと。だから泣くなって」
「あはは、冗談よ」
覆った手をはずしたマイの顔は笑っている。
(だよな~泣くはずないよな)
予想はしていたが、マイの性格がいまいちつかめていない。
「何だよ、からかったのかよ」
「遼ちゃん、私を好きって言ったよね?」
「いや・・・それはつい・・・」
(何か調子狂うなあ)
「それって遼ちゃんの本音だよね?」
「・・・・」
「あれ?口から出まかせなの?」
「いや」
「じゃほんとの事なんだ」
俺は、照れくさくて言葉を出さずにうなずくだけ。
「ふ~ん、じゃ私も好き」
「ほんと?」
(じゃ私もって・・・まっ、いっか)
「じゃなきゃ、しないわよ」
そう言いながら俺の胸の中に滑り込んでくる。
「しばらくこうしてて」
「オッケー」
(甘え上手な女だ)
「そうだ、温泉に入りにいかない?」
「おっいいね~行こう、行こう」
(今、しばらくこの状態でいたいと言ってたのに・・・自由奔放な子だな)
「身体を洗わなくちゃね」
「そうだね」
(でも、洗ってきれいになるのも残念だなあ)
2人ともオスとメスの匂いがたっぷりする。
俺は、この匂いを嗅いでいて心地いいと思っている。
(俺・・・匂いフェチだったっけ?それともマイの匂いがいいのかな?)
「もう、みんな寝ているよね?」
「もう夜中の二時だから、さすがに誰も起きてないだろうなあ」
俺は、そっとドアを開けて首だけ出して廊下の右左を見る。
「静かだ・・・」
頭がぼ~っとしている。
二日酔いのような状態。
「さて、行くか」
「うん」
部屋を出て、大浴場まで歩く。
自然にマイが腕を組んできて寄り添う。
「誰かに見られたらやばくない?」
「大丈夫よ」
俺の鼓動は高鳴っている。
(う~ん・・・まあいっか!)
入り口に着く。
「じゃ、後で」
俺は、脱衣所に入り裸になる。
後ろに人の気配がする。
(誰だ?)
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