第9話 ノーパン喫茶
俺は、次に何の仕事が始まろうと驚く事はなかった。
オーナーに喫茶店に呼び出されて会いに行く。
「おう!久しぶりだな」
オーナーは相変わらず羽振りが良さそう。
「今度は何をやるんですか?」
「次は、ちょいと前に流行ったノーパン喫茶」
「ノーパン?」
(と、言うことは・・丸見え?)
「時代遅れに見えるが結構、流行っているらしい」
「いつからですか?」
「まあ、いいから着いてこい!店に行くぞ」
歌舞伎町の中をオーナーと歩いて店に向かう。
店の入口は同じ様子でシャッターは開いているが看板は変わっている。
俺達は、オーナーと一緒に店に入る。
「おお~~!!いつの間に?」
すでに改装が終わっている。
「すげえ!」
床から壁から天井まで鏡だらけの部屋。
昔、こんな部屋は遊園地で入った記憶がある。
そいて、奥には個室がいくつか作られている。
「中々、こじゃれたものだろ?」
(ごじゃれって・・・どこがだよ!)
と思ったが、口には出せない。
「スタッフは、お前らでいいから、後は女だけ募集してたくさん雇えよ!」
「店長は誰がやるんですか?」
「今までと同じだよ」
「そうですか・・・」
「なんだよ、あいつじゃ嫌か?」
「いや、そんなことないっす」
(少し気まずいんだよなあ)
過去の事は気にしない事にする。
この頃には、面接も任されるまでになっている。
面接をして、俺好みの女だけを選んだのは言うまでもない。
店の中ではトップレスにミニスカート、ノーパンだがストッキング一枚はいている。
(もろ見えだなあ)
もう裸を見ても、ときめきや興奮、何もない。
それくらい女の体は見飽きている。
面接に来た子の中に、あきらかに家出少女としか思えない女がいた。
偽名なのか本名なのかわからなかったが、めぐみという女。
(めっちゃ俺好みじゃん)
心の中では即採用。
「年はいくつ?」
「じゅう、十八です」
答え方に歯切れが悪い。
(嘘っぽいな・・・)
「何か証明できるものある?」
「ないです」
「そっか・・・」
(ま、いっか)
履歴書通り18歳と信じることにする。
胸の形もよく、スタイルは抜群で小顔でハーフのような整った顔立ち。
「じゃ採用するから明日から来てね」
女は小さな声で答える。
「あのお~すみません、頼みがあるんですけど・・・」
「ん?何?」
「私、地方から出てきて住む所もないから、住み込みで働かせてもらえませんか?」
「寮はないんだよね~」
「店の中でもいいのでお願いします」
「部屋を借りれば・・・」
(と、言っても金もないか)
言いかけてたが最後まで言うのをやめる。
そんな金があったら借りているだろう。
「ん~~困ったな」
しばらく俺は考える。
(そうだ!)
「じゃしばらく俺の家に寝泊りさせてやるよ」
「え?」
「働いてお金貯まったら部屋借りればいいよ」
「でも・・・」
「貯まるまで、俺の家にいていいからさ」
(かわいいと得だよなぁ。つい俺も後先考えず言ってしまった)
「その代わり店の誰にも内緒だよ」
「はい・・・ありがとうございます」
目に少し涙が潤んでいる。
(なんか愛しくなってくる)
捨て猫が拾ってほしそうに見つめている風に見える。
(やばいなあ、ドキドキしてるぞ)
女は無頓着なのか?
初対面の男の家に寝泊りする危険を感じる余裕もないくらい切羽詰った状態なのか?
どちらにしても、俺にとっては刺激的な出来事。
「ガチャ」
「ただいま~」
寝ているかもしれないので小さな声で言った。
「おかえりなさい」
「あれ?起きていたの?」
美紀が出て行って以来、一人暮らしが続いていたので帰ってきて誰かがいるのが嬉しい。
「何か食べた?」
「うん、コンビニでおにぎり買ってきて食べた」
「それだけ?」
「うん」
「それだけじゃ身体持たないぞ。何か作ろうか?」
「ううん、いらない」
「じゃ、もう寝たら?」
「一緒に寝てほしい」
「一緒に?」
(この子は、何を言い出すんだ)
「わかった。シャワー浴びてくるから先ベッドに入っていなよ」
戸惑いながらも答える。
「うん」
シャワーをしながら思いが巡る。
(この後、どうすればいいんだ)
店の女は大事な商品であり、従業員は絶対に手を出してはいけないという規則がある。
(ばれたら俺の身が心配だしなあ)
その日、俺はこの子に手を出さなかった。
男の本能よりも理性の方が打ち勝ったのだ。
(つらいなあ)
この俺の行動を話しても誰も信じないだろうと思って日々過ごしている。
俺が帰ってくるまで、いつも起きて待っている。
ベットに入るとくっついてきて、スヤスヤと眠りだす。
(かなりの寂しがり屋さんか?)
まるでペットのようにかわいい。
「ねえ、いつもなんで起きて待ってるの?」
疑問を投げ掛ける。
「一人じゃ不安で眠れないの」
「じゃあ、家出てから今までどうやって過ごしてたんだ?」
「・・・・」
(もしかして、身体を提供して寝床を?)
深くは追求するのをやめる。
抱きしめながら思う。
(この状態、いつまで持つんだろうか・・・)
この時に俺は女を抱くのを我慢するという忍耐強さを覚え鍛えられる。
最初は下半身が言う事をきかなかった。
しばらくすると、自分で男性機能をコントロールできるようになる。
正直辛い毎日を過ごしている。
溜まった性欲は、ナンパした女達にぶつけて欲求不満を解消する。
何日も一緒にいながら肉体関係がないとタイミングを失って出来なくなると聞いた事がある。
確かにそうだと思うようになる。
(タイプなのに・・・)
めぐみは、抱きしめられながら、いつも何か言いたそうな雰囲気。
だが何も言わない。
そして、大事な妹のような存在になっていく。
(手を出さない俺の事をきっと不思議に思ってるのかもしれないな)
しばらくしてめぐみもお金が貯まる。
金も俺が管理してあげている。
めぐみが稼いだ金を毎日預かり貯金して、そこから小遣いを渡していた。
部屋を借りたくてもめぐみの名義では貸してもらえない。
俺の名前でワンルームの部屋を借りる。
「今までありがとう。でも・・・」
何か言いたそう。
「どうした?」
「・・・・」
泣いている。
「出て行きたくないとか?」
「・・・・」
声はなく、小さく頷く。
俺の心に無性に寂しい気持ちが湧き上がる。
気が付くと強く抱きしめていた。
愛しくて仕方がない。
その後二人は自然に男と女の関係になる。
(しまったあ、やっちまった)
さすがに俺も我慢の糸が切れてしまった。
めぐみの体はやせていたが、骨が細いのに肉付きがいい。
(胸は大きいのはわかっていたけど、マシュマロのように柔らかいな)
つかんだ指の間から肉がはみ出てくるほど。
(こんな、感触は初めてだなあ)
経験が少ないせいか、女性の機能は十分だったが反応は少ない。
でも俺には、すごく新鮮なものに映る。
行為が終ってから我に返る。
(この後、俺達の関係はどうなるのだろう?)
店にばれたらヤバイし、恐い。頭の中にそんな思いもあったせいで、これ一回きりの関係で次はなかった。
結局めぐみは、俺の傍に留まらずにそのまま借りた部屋で一人暮らしを始める。
店では何事もなかったかのようにお互い仕事を続けていた。
(意外に口が固くて安心した)
めぐみが自分の好みの相手なのに、好きと言う感情が高ぶらない自分に疑問が沸いていく。
(何でなんだろう?)
そんなある日、めぐみが突然姿を消す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます