第35話 元カノの友人④

その日の夜中に、ネックレスをつけたゆうこが俺の店に来る。


「あれ?どうした?」


(やはり来たか)


「遼は女の扱いうまいわね~、さすがホスト」


「ん?何の事?」


「まあいいわ!騙されてあ・げ・る」


「何言ってるんだよ。騙すなんて人聞きの悪い事を・・」


「でも、うれしかったのよ」


「そう?それはよかった」


「ありがと」


「なんだ?なんだ!この空気〜。ハートが飛び回ってるぞ~」


真樹が二人の間に割り込んでくる。


「真樹〜せっかくのラブラブ中なのに邪魔するなよなぁ」


「いらっしゃい!ゆうこちゃん」


「おはよ~」


「あれ?ゆうこちゃん。そのネックレスかわいいね」


「そう?」


「似合ってるよん」


「ありがとう」


(白々しいかっただろか?でも純粋に喜んでるから上手くいったか。真樹サンキュ!)


実は真樹に、席に着く前にネックレスをほめるように、頼んでおいた。

それからゆうこは、毎日のように店に通うようになる。


ネックレス効果抜群!

出費した金の元は十分とれたと思う。


(上手く行き過ぎて怖いなあ)


俺は、ゆうことソープの店でもプライベートでも寝ていない。

しばらくの間、深い関係を持つのを避ける。

いつでも関係を持つ事は出来る。


ホスト相手に遊ぶ女は、寝てしまったら満足する女が多い。


(これって、達成感からなのかなぁ?)


人の物を奪った満足感みたいな感覚になるのかもしれない。

関係を持たないとお金を出さない女。

焦らすと長続きする女。

いろんな接し方で店に長く来させたり、お金を引っ張ったりする。

その辺の見分け方が難しい。


ホストも役者のように演技が必要な時もある。

いろんなタイプの性格に、ならなくてはいけない。

強い男、弱い男、母性をくすぐる男。

自分の我を通すホストが多いが、そうすると相手する女のタイプが限られていく。

幅広いお客をつかむには、やはり演技派な男だと思う。


俺は、常に客観的に自分を見つめている。

そして自分をコントロールして相手に合わせた性格を作っていく。

たまに本当の自分がどれなのか、わからなくなる事もある。

これがホストに適しているかどうかはわからない。


ゆうこは、ホスト経験が少ない事がわかった。

俺には、まだ性格を見抜く力がないので、どう対処していいのかわからない。

客として続ける為に、すぐに寝ていいのか判断できない。

そして、関係を持ってすぐに終ってしまうのが怖かった。


しかし、二人はそんな駆け引きもなく自然に結ばれてしまう。

仕事で男相手にストレスがたまるのだろうか、激しく求めてくる。

ゆうこも由美と同じように、自分が満足出来る様に、いろんな要求をしてくる。

この二人のおかげで俺は、女性の愛し方がかなり上達した様な気がする。


(俺って、情に流されやすい男なんだな)


「まだまだ修行が、足りないって事だな」


「遼、一人で何ぶつぶつ言ってるんだよ!」


待機中に隣の真樹が声をかけてくる。


「あ、あぁ、何でもないよ」


「相変わらず梶さん、無断欠勤続いてるよな、何かあったんだろうか?」


ナンバー1の梶が店に来なくなって数日経っている。



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