第119話 ホテトル嬢②
俺は、待ち合わせ場所に向かう。
「まだ、来てないか」
俺は、待つ間ベンチに座り楽しそうに園に入っていく親子連れを眺めている。
時間になると向こうから、ちさとが子供の手を引いて歩いてくる。
(ほんとに小さい妹だなんだな・・・)
ちさとは、目の前に到着したのに手を振りながら挨拶をする。
「おはよ〜」
「おはよ」
「早いのね。待った?」
「いや今来たとこだよ。こんにちは、お嬢ちゃん」
(お嬢ちゃんって変かな?)
「こんにちは、お兄ちゃん」
「う~んと・・・名前は?」
「ちか」
「ちかちゃん?・・・お姉ちゃんと同じちいちゃんだね」
「いくつ?」
「5さい」
「5歳か~結構年が離れた妹じゃない?」
「今日、ママ達が出かけるから子守を頼まれたんだ」
ちさとは小さい声で答える。
「そっか、じゃあ一緒にあそぼっか」
(なんか、だまされたような感じだな)
しかし、それなりに楽しい。
(俺、意外に子ども好きかも・・・)
「こうやっていると若い親子連れに見えるかな」
「あはは、ほんとそうね」
時間を忘れるくらいたっぷり遊ぶ。
そして、何事もなく二人は帰って行く。
(妹と一緒じゃ何もできないよなあ)
今日、もしかして・・・の下心は無残に跳ね返された一日だった。
ちさとが店に来る。
俺は急いで席に向かう。
ちさとは俺に向かって満面の笑顔を見せる。
「おはよ」
「いらっしゃい」
「今日、指名する」
「へ~誰指名?」
「遼に決まってるじゃん」
「え?俺?」
「そうよ」
「それは、またまたどういう風の吹き回し?」
「あなたの人柄に惚れたのよ」
「ふ~ん」
(惚れた?)
「商売抜きで付き合ってくれたし、妹も好きだってさ」
「へ~それは、うれしいね」
(一緒に遊んだ褒美みたいなもんかな?)
「ちいも好きよ」
「おおっと、いきなり告白?」
それ以来、店に指名で来てくれるようになる。
噂では、ちさとはどこのホストとも寝ないという話を聞いている。
そんな話を聞くと男として闘争本能がわく。
何としても俺と・・・。
「あれ?ちいちゃん眼帯・・どうした?目、怪我したの?」
「目にできものができて腫れているの」
「ふ~ん、そっか。なんか痛々しいね」
「そう?でもすぐ治るよ」
「そういえば、ちいちゃんはどこに住んでいるの?」
「新大久保」
「ここから近いじゃん」
「うん」
「今度、家に遊びに行っていい?」
「だめ」
「何で?」
「なんでも」
「いいじゃん」
「だめったら、だめ」
ちさとは、強い口調で断る。
「そっか・・・ならいいや」
俺は、しつこく迫るのをやめる事にする。
「ごめんね」
(だめか・・・男でもいるのかな?)
ある日、業界の情報屋、相原が話し掛けてくる。
「遼、ちさとって女とは絶対やるなよ」
「え?何かあります?」
「もしかしてお前、もうやっちゃった?」
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