第2話 お水の世界の第一歩

喫茶店のバイト代では二人で遊ぶ金が足らなくなり、俺は新しい時給のいい仕事を探す事になる。


「仕事見つかんね~」


「じゃあ、あたしのとこで働けば?」


美紀はすでに稼ぎのいい仕事を見つけ早々と喫茶店を辞めて夜の飲み屋に働いていた。

俺は、夜の世界の仕事は怖くて喫茶店で働き続けている。


「美紀の所って、飲み屋?俺が?」


「大丈夫よ。男は楽な仕事だから」


「ふ~ん、楽な仕事ね、ほんとかな~」


(俺に水商売なんて、できるだろうか・・・)


俺は、しばらく迷いながら他のバイトを探していたが、美紀の後押しもあり結局、美紀の働いているスナックの系列店のクラブで働くことになる。


俺が夜の世界に入る第一歩だ。


最初はウェイターから始まり、慣れてくると厨房に入って簡単なツマミも作ったりして店全体の仕事も出来る様になっていく。

カウンターでカクテルを作ったりもして、慣れてくるに従い、お客とも徐々に会話するまでになる。

そして、ホステスの客付けなども任され、いっぱしの黒服の男になっていく。


そこで俺の生き方を大きく変える一人の女と知り合う。


田舎育ちの俺から見れば、ホステスは大人の女性に見える。

どういう訳か俺は、みんなから可愛がられている。


「遼ちゃん、おしぼり持って来て」


「はい、かしこまりました」


(遼ちゃんって・・・大人なのに何でちゃん付けなんだろう?)


この世界では普通の事らしい。

明らかに年上の女性に呼ばれて違和感ないが、同年代の子にも呼ばれると、からかわれている気がする。

水商売という仕事が、俺の性格に合っていたのか、面白くて楽しい。


「遼ちゃん、よく気がつくし動きもいいよ」


みんなから褒められる。

それが可愛がられた理由かもしれない。


ある日、一緒に住んでいる美紀が朝になっても帰って来ない。


「おかしいな」

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