第6話 風俗店

最近歌舞伎町ではゲーム賭博の摘発が頻繁に起こるようになった。


「最近、手入ればっかりで他のゲーム屋があげられてるな」


「そうですね」


「うちの店もいつ手入れが入るかわからんな」


(のんきなオーナー、危機感がないよなあ)


しかし、毎日来ていたオーナーが店に来なくなる。

売り上げは一日に何回も分けて店長が持ち出し、どこかへ持っていく。


(いつもと違う。嫌な雰囲気だな・・・)


そんなある日、警察の手入れが入る。

俺は、たまたま休みで捕まらずにすんだ。

店に行くと、営業しているはずの店のシャッターが半分閉まっている。


「あれ?今日休みだっけ?おかしいな」


店に入るとバイトの先輩がいる。


「どうしたんですか?」


店内を見て俺は驚く。


「あれ?ゲーム台は?」


「とうとう、うちもやられたよ。お前は運がいいな」


「手入れっすか?」


「警察にみ~んな持っていかれて、店の中空っぽ。」


たまたま働いていた先輩は、すぐに帰されたが店長はまだ戻ってこないらしい。

しばらくして、オーナーが恐る恐る様子を伺いながら店の中を覗いている。

警察がいないと思うとシャッターを上げて店の中にドカドカと入ってくる。


「よう!大丈夫か?」


「はい」


「店長は?」


「まだ警察でしぼられてると思います」


今までの経緯を先輩が説明している。

俺は、黙って聞いていた。

オーナーは大笑いしながら冗談を言っている。


(店ご捕まったというのに、のんきな会話)


「そっか。じゃ、もうここのゲーム喫茶はおしまいだ」


「そうなんですか?」


「責任は店長がとってくれて、罰金払って戻ってくるよ」


「そんな簡単なものなんですか?」


「歌舞伎町でも色んな店が何十件ってあげられてるから、そんなもんだろ」


「ふ~ん」


(なんか、オーナーの話を聞いてると賭博容疑って悪い事だって意識がわき上がってこないんだよなぁ)


そんな事より気になっている事がある。


(俺はまた無職か?)


オーナーに聞く事にする。


「もう店は再開しないんですか?」


「いいや、すぐにやるよ」


「え?またゲーム喫茶?また捕まるんじゃ?」


「今度は違う商売をやる」


「何をやるんですか?」


「むっふっふ」


(不気味な笑いだなぁ)


もう次にやる仕事の内容が決まっている様子。


「おまえ達、続けてここで働いてくれるか?」


「はあ・・・」


(仕事の、内容にもよるけど)


「今度は風俗だ、風俗」


「風俗?」


「個室マッサージ店だ。手伝えよ」


隣の先輩は、しばらく考えてオーナーに返事をする。


「すみません、僕は、これを機会に学業に専念しますので辞める事にします」


(え~辞めちゃうの)


俺は、どこもあてがなかったのでそのままバイトを続ける事にする。


「俺は、やります」


(風俗店なんて、ちょっとおもしろそう)


そしてゲーム喫茶は、個室ぼったくりの店に変る。

仕事内容は、そこの受付や部屋の掃除。

店の収入は、女の子達が体を張って稼いでくれる。

俺達は、楽な仕事だ。

女が客から料金を貰い何割かを店にバックするというシステム。

女の子の質によって、大きく売り上げが左右する。

うちの店は、レベルの高い女の子が募集で集まる。


俺は、この頃から女性観が変わっていく。


(女って強くて怖い・・・)


パンティ1枚で透けたネグリジェを着て店内を歩き回っている。


(胸も丸見えだし、目のやり場がないな。まいったなあ)


免疫が出来てきたのだろうか、女の裸を見てもあまり興奮しなくなったような気がする。

部屋の壁は薄く、客との会話もよく聞こえてくる。


「なんだよ、この店は!まとも触らせねえのかよ!」


「ふざけんじゃないよ!触りたかったら金よこしな!」


「さっき払っただろ?」


「触りたかったら追加料金払うんだよ!」


「なんだここは!ぼったくりか?」


「つべこべ言わず払うもん払いなよ!このスケベ」


「なんだと、このアマ~」


「だーかーらー早く金をよこしな!」


「何だと」


「もっと触りたかったら追加料金払えっつぅの!」


(すげえなあ~)


こんな風に客と女の子が大声でもめている様子も聞こえてくる。

俺は女の子達から、客とのトラブルの話などいろんな相談を受けるようになっている。

女の本性や弱い部分、いろんな性格の女を見ていくうちに女を見る目が養われていく。

部屋の掃除を行くたびに、話しかけてくる一人の女がいる。


「ねえちょっと聞いてくれる?」


「何?」


「実はね、私の彼がこの仕事をやめてほしいって言うんだけど・・・」


「彼氏、この仕事知ってるんだ。それで?」


立て膝で座りながら話している


(パンティ丸見えだって・・)


「でもお金がないし、仕方ないじゃんって言っても辞めろ辞めろってうるさくて」


「まあ普通の彼氏ならそう言うだろうな」


「でも食事代とか遊び代は、全部私が出しているのに勝手だと思わない?」


「わかっていても言いたくなるんだろうなぁ」


「そうなの?」


「彼の気持ちわからないでもないなぁ」


「何がわかるのよ~彼の味方?」


「いや、そういうつもりじゃないけど」


(面倒臭いなあ)


「あんたはどっちの味方なの?」


「そういう問題じゃないと思うけどなあ、ただ・・・」


「ただ、何なの?」


「同じ男だからわかるような、わからないような気がするって事だよ」


いつも彼の愚痴の聞き役をしている。

だからと言って別れる様子ではなさそうだ。


(毎回同じような内容ばっかりだし・・・)


こんな俺と彼女の関係に変化が訪れる。

俺は彼女と外で二人きりで会う様になる。


美紀は、俺の仕事がこの風俗店に変わってからはあまりいい顔をしていない。

出かける度に同じ様な言葉を投げ掛けてくる。


「また女のいる店に行くの?」

「女って何だよ」


「裸の女の巣に行くんでしょ」


「ばっかじゃねえの。仕事だよ仕事!何言ってるんだよ」


「そんな事言って騙されないからね」


(話しにならねえな)


店に女ばかりだと誘惑が多いだろうと思い心配なのだろう。


(美紀だけを思い、まじめにやってるのになあ)


しかし、美紀に対して誠実な俺が・・・。

ある日、裏切る事になってしまう。

美紀の心配通り、まんまと女の誘惑にはまってしまう。


「ねえ今度プールに一緒に行こ」


「だって彼は?」


「彼は、帰省するんだって!」


「ふ~ん」


(鬼の居ぬ間にってやつかな?)


「私は仕事してるっていうのにね」


「そっか」


「それも、帰る交通費は私の稼いだお金なの。むかつく~」


「あらら、それは腹が立つ話だ」


二人はいつもの事なので別にいいじゃんと思ったがここは彼女に話を合わせる事にする。


「だから・・・ね!」


猫なで声で誘う


(こういうのに弱いんだよなあ)


「どうするかな・・・」


「お互い相方には内緒で遊ぼうよ」


「そんな事を言って悪の道に誘い込むなよなあ」


(ま、いっか!お互い様って事で)



そして、俺は女の誘いに乗る。

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