第159話 変わり果てた女①
美紀に電話する。
「久しぶりだけど部屋行っていい?」
「うん・・・でも」
(ん?曖昧な返事・・・男がいるのか?)
美紀は、無職になった時に部屋に転がりこみ散々世話になる。
ホテトル経営するようになり忙しくて部屋に戻らず連絡もしない放置状態。
そして、他の女、あゆみと仕事、私生活と一緒に過ごしていた。
身勝手だとは思いつつ再び連絡を入れる。
「彼氏できたかな?」
「いないけど・・・」
「何だよ元気ないなあ~どうした?」
「・・・・」
「取りあえず行くよ」
「あ・・・・」
美紀は何か言おうとしていたが、俺は電話を切る。
(あいつ、どうしたのかな?)
久しぶりに美紀の部屋に来る。
鍵は持っていたので開けて入ろうとするとドアにチェーンがかかっている。
「お~い美紀、これはずして開けてくれよ~」
ドアをガチャガチャしながらチェーンを指差した。
奥から美紀がドアのそばにやって来る。
「ほんとに来たのね」
「来るさ。俺が来るのわかっていて、何でチェーン?」
「うん、ちょっとね」
「まあ、いいや開けて」
(何か暗いな・・・)
ドアが開いて部屋に入る。
「なんだこれ?」
部屋の中が荒れて、ゴミが散乱している。
きれい好きの美紀がいったい何が・・・?
ひどい有様。
悪臭も凄い。
「何があったんだ?」
「・・・・・・」
返事もしない。
「何とか言えよ」
(寝ぼけているだけ?)
「・・・・」
「仕事は?」
目が開いてて起きている様子なのに、ボーっとしていてうわの空。
しばらくするとボソボソと俺の言葉に答える。
「仕事は、たまに・・・」
「たまに?」
部屋の奥で動く気配。
そこに目をやると犬がいる。
あんなに人なつこかった犬が傍にも来ないでおびえて震えている。
「ちゃんと飯食っているの?」
「うん」
「犬が脅えてるじゃん。かわいそうに」
「・・・・」
「しょうがねえなあ」
とりあえず俺は、部屋を片付け始める。
「きったねえ部屋」
「そのままでいいから・・・」
「だって片付けなきゃ・・・ん?」
俺は、ある一箇所に目がいったまま動けなくなる。
(まさか!)
そこには、注射器らしき物が落ちている。
美紀を見ると寝ている。
「おい!・・・・なんだよ、寝てんの?」
身体を揺らし眠っている美紀を起こす。
「起きろよ」
「う~ん・・・」
「起きろって」
「何よ」
「何だよ、これは」
俺は、注射器を指先で持ちながら聞く。
一瞬目が大きく開くが、すぐの目をつぶる。
「・・・・」
何も答えない。
俺は、美紀の傍に寄る。
嫌がる美紀の腕をまくって見ると注射の痕。
(こいつ・・・)
打ちすぎてなのか所々硬くなっている。
「ちょっと来い」
俺は、洋服の首根っこを掴み美紀を立たせる。
寝転ぼうとするのもお構いなく、抱きかかえ風呂場に連れていく。
美紀はズルズルと引きずられながら足を動かして歩く。
俺は、頭から水をかける。
「キャー、何するのよ」
俺は、そんな声も構わず水をかけ続ける。
「やめて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます