第11話 人生変える女とホストクラブ

店は女の入れ替わりが激しい。

ソープランドの女も何人かきている。

病気の治療中で店に行く事が出来ないらしい。

日銭で生活している彼女達にとっては、その日の収入がないと生活が厳しくなる。


ここには、ピルを抜いている期間、治療中の間だけの短期のバイト。

何の病気なのかは聞いてないが、ここなら治療中でも十分仕事ができるという事だ。

収入はソープでの収入の半分にも満たない。

それでも俺たちの何倍も稼いでいる。


店の中で一番仲のいい女がいて、名前がアリス。

アリスという名前も違和感を感じない程の外人の様な顔立ち。

しかし、本人は純粋な日本人だと言う。

俺の好みのタイプで、付き合ってほしいと思わず言いたくなる程の女。

スタイルも店の中でも一番。


(ほんと、何回見てもいい女だなぁ)


そして、この女が俺の人生を、またさらに大きく変えていく女。


女達は、客に付いてない間、受付にいる俺の所に暇つぶしに来る。

当然、アリスもその中の一人で毎日いろんな話をしている。

俺はアリスとの会話が一番楽しい。


アリスは、露出の多い目立つ格好で、とびっきりの笑顔でウィンクをしながら声を掛けてくる。


「おはよう~今日も一日がんばろうね〜」


「おはよ」


(いい笑顔だ)


「今日はいいお客ばかりだといいな~」


「そうだね」


「そうそう、昨日もダーリンの店に行ったんだ~」


(また、その話かよ)


「相変わらずかっこよかったな~」


「はいはい」


俺は、面倒臭そうに答える。

アリスにはダーリンと呼ぶ男がいる。

いつも受付に来ては、その男のノロケ話をする。

俺はその話を聞いていても面白くない。


「お前の頭の中はダーリンだけかよ」


「そうよ。だってかっこいいんだもん」


(俺の入り込む余地はなさそうだな)


その男は、歌舞伎町のホストクラブで働いているナンバー1。


「アリス、毎日の稼ぎをホストに貢いでいちゃお金貯まらないぞ」


「いいの、いいの、なくなっても、又稼げばいいんだからさ」


「身体張って稼いだ金を男に使ってもったいなくない?」


「ゼンゼン~。だってぇ〜店行ったらダーリン喜んでくれるんだもん」


「家賃とかは、どうするんだよ?」


「私、ホテル住まいで半月分前払いしてるから大丈夫」


「でもなあ・・・」


「だから、お金を全部使っても平気なのよ」


「なるほどねぇ・・」


(ばかだな~騙されて貢がされているのに気づいていないんだな)


「でもここの一日の稼ぎだけじゃお店にも行けなくてさ・・・」


本当に悲しそうに呟く。


(ある意味、真面目で一途な女の子なのかもなあ)


「早くソープに戻らないと捨てられてしまうよ~」


(バカだなぁ~聞いてて呆れる)


我慢できくなり思わず言葉を発してしまう。


「それって騙されてるよ」


「そんなことあるはずないじゃん」


「そうかなあ」


「私は愛されているんだから」


アリスは全く聞く耳を持たない。


(超ポジティブ女!だめだこりゃ)


「ホテルにね、たまにダーリンが泊まりに来るのよ」


「そっか・・・」


(俺の出る幕はなさそうだな)


アリスは、しばらくして元の職場に戻っていく。

それでも用事もないのに、度々店に遊びに来る。

たまたまオーナーがいた時にアリスがやって来た。


「こんにちは~オーナー相変わらず愛人と遊んでいるんでしょ〜」


「ば~か!お前と違うよ」


「え?お前って・・私?愛人?意味わかんなーい」


「そうだよ」


「ダーリンの事言ってるの?愛人じゃないもん。彼氏だよ!もぉ〜」


怒ったのか、そう言いながら外に出て行く。


「馬鹿な女だな」


オーナーが俺に話す。


「あいつは、昔やくざの女だったんだ」


「へえ~」


「ヤクザの男と喧嘩したのか泣いて落ち込んでる時にホストクラブに連れて行ってやったんだよ」


「そうなんですか」


「そしたら俺が指名しているナンバー1のホストと、いつの間にかできちまっててな~」


「ふ~ん」


「俺がいなくても、一人でそのホスト目当てに通うようになってな」


「やくざとはどうなったんですか?」


「うまく縁が切れたみたいだが・・・どうだかなあ」


「大丈夫なんですかねえ」


「まあホストもヤクザと似たようなもんだよ」


「そうなんだ」


(自分も同じ様なもんなのに他人事の様に言ってるし)


「馬鹿な女だよ」


そういってオーナーは外に出て行く。


(やっぱり騙されてるのか?)


「辛い思いしてもまた同じような男を好きになるんだなぁ」


ある日、アリスがいつものように店に遊びに来る。


「ねえ、今日さ仕事が終わったら暇?」


「うん、別に予定はないけど」


「何時に終る?」


「十二時」


「ちょうどいいね。終ったらお茶しよ。」


「いいけど・・・」


(これって・・デートの誘い?)


「じゃ待ってるね~、あ!そうそう一樹も一緒に連れてきてよ」


「え?一樹も?」


「じゃ~ね~~」


理由を、聞こうと思ったのにそそくさと用件だけ言って出て行った。


(一樹も一緒か・・・)


「つまんねえなあ」


夜中0時に仕事を終えて、一樹といっしょに待ち合わせの喫茶店へ向かう。

風林会館の一階の店で待ち合わせ。


「アリス、俺も一緒に来いって何だろうな?」


一樹が聞いてくる。


「さあな」


一樹も一緒なのが俺は面白くない。

喫茶店に入るとほとんどの席が待ち合わせなのか派手なお水の女性達で埋まっている。

見渡すと奥の方で一際目立つ女が手をふっている。


「こっち、こっち~」


喫茶店の中でも一番目立っている。

アリスの連れの男が、どんなやつなのか気になったのかもしれない。俺達に視線が集まる。

まんざら悪い気もせず、優越感がこみ上げてくる。

そう思わせてしまう程いい女だった。


「おまたせ」


「ほんと待ったわよ」


ちょっと怒ったような素振りをして、すぐに笑う。


(かわいい)


座ると、すぐにアリスは、話を切り出す。


「今日一緒にホストクラブに行かない?」


「俺達と?だって俺達、男だぜ」


「一樹の言う通り。あそこは、女の行く所だろ?」


「男だけじゃ駄目らしいけど、女が一緒なら入れるんだって」


「そうなんだ」


(変な仕組みだな)


「あなた達のオーナーと行った時も私がいたから入れたって事。あのオヤジはいつも誰か見つけては女連れで行ってるのよ」


「そうか、そこでアリスはホストに引っ掛かったというわけね」


俺は、皮肉たっぷりに言ってやる。


「そういう事を言わなーい!私が惚れただけなのよ」


その後もホストクラブの話は続く。

俺も一樹も興味深く聞いている。


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