第71話 誕生日②
「あら?話してなかったっけ?」
とぼけた顔で答える。
「うん。ホストと住んでいた事があるの?」
「昔ね」
「へ~そうだったのか」
(昔っていつだよ〜最近じゃ?)
「結局その子は、ナンバー1になったけどね〜」
「何だよそれ。俺にもなれってか?」
(私がトップにしたんだって言ってるのか?)
「そんな事望んでないわよ」
「何か気に入らないなあ」
(次は、俺って事か・・・)
「気にしないで」
「もっとその話を聞かせてくれよ」
「過去の話よ。前の男の話しなんて、聞きたくないでしょ?」
「なんか気になるな~ナンバー1のホストって誰だ?」
「もう聞かないの!話したくないから」
「お~こわ!」
(めずらしいな~こんな由美・・・何かあるのか?)
「で、どうするの?住むの住まないの?」
少し怒った顔。
「わかった。一緒に住むのは、いいよ。その代わり、俺からの条件を出してもいい?」
由美は少し考えた様子の後、答える。
「いいわよ。なあに?」
「マンションの名義は俺じゃないよね?」
「まだ本契約は済んでないから変更出来るけど・・・」
「いいね。じゃ由美にしなよ」
「それじゃあ、意味ないわよ。プレゼントにならないじゃない」
「いいんだよ」
「どうして?」
「いいから・・・。そのかわり家具や電化製品を俺の好きな物を買っていい?」
「いいけど・・・マンション名義の意味がわからないわ」
(後々、二人の関係がこじれたら面倒だからなんだけど・・・)
「何?私達の将来の事を心配して言っているの?」
「いやそんな事ないよ」
(鋭いな・・・)
「別れても返せなんて、せこい事言わないわよ!」
「わかってるよ」
(そっか!いい事を思いついた)
俺は、ワンルームマンションならさほど高い物件でもなく簡単に買える金額なんだと判断する。
買わせない作戦を思い付く。
チラシを見ながら考えらふりをする。
「う〜ん・・・」
「何を考えてるの?素直に受け取ってよ」
「ところで、マンションは一括現金払い?」
「そうよ」
「もっと広い部屋だと一括はきつい?」
「そうね。ローンを組めば買えるだろうけど、こんな職業じゃ銀行も貸さないわよ」
「だったら賃貸でもう少し広い間取りの所を探そうよ」
今の由美の手持ちの金だと、買うのはワンルームくらいなのだろう。
上手い口実で買わない方法を提案する事にする。
由美は、マンションのチラシをジッと見ている。
「これじゃ狭い?」
「二人と一匹なら狭いかな」
「一匹って?」
「そう。賃貸マンションでいいから、犬をプレゼントしてほしいな」
「犬?」
「マンション代に比べたら安いもんだよ」
「犬好きなの?」
「うん」
(俺のいない時、犬で気を紛らわしてもらわないと)
寂しいからかなのかどうかわからないが、店に来ている女達は、ほとんどがペットを飼っている。
しばらく考えた由美が答える。
「わかったわ」
「後・・」
「まだあるの?」
「基本的に仕事の拠点は、今のホスト部屋でいいかな?」
「・・・・」
「相原先輩のヘルプとして部屋を完全に出ることは出来ないからだよ」
「そんな決まりあるの?何なら私から話すよ」
「だめだめ!そんな事をして俺に恥をかかすなよ」
「わかった。仕方ないわね。」
そんな決まりはない。
相原には口裏を合わしてもらう事にする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます