第179話 何故逮捕12

雑誌に女の水着姿などがあった為、男としての機能が呼び起こされてしまう。


(たまっているからな・・・みんなどうしてるんだろ?)


こんな普段なら何でもない水着姿の女性。

これで興奮してしまうなんて、このままずっと塀の中なんておかしくなってしまいそうだ。


間仕切りも何もない部屋でどうすることも出来ないので我慢するしかない。


「お前、何で捕まったんだ?」


「はあ・・・」


「俺は薬」


「薬ですか?」


「シャブだよシャブ」


「・・・・」


(すごい会話だなぁ)


「もう、俺もこのまま小菅だろうなあ」


「小菅?」


「起訴されて刑が執行されるまでいる所だよ。東京拘置所」


「もう刑が確定しているんですか?」


「多分な、そこから刑務所送りだな」


「そうなんですか・・・」


「まあ自業自得だな・・・でお前は?」


「俺は、風俗店をやっていて、そこの店が摘発されて・・・」


「風俗って?」


「ホテトルです」


「あ~。それで?儲かったのか?」


「まあ、そこそこですね」


(この人は検事と関係ないけど、雇われ店長だったっていうのは、言わなくていいか)


俺は、あの雇い主の暴力団の男の事は、黙っている。

就寝の時間になった時、突然男が泣き出す。


(なんだ?なんだ?どうした?)


その男は、いつも寝る前に俺と話をしながら突然泣き出すのだ。

大の大人なのに子供のように泣きじゃくっている。


「ウウウ・・・さみしいよ~、会いたいよ~」


「すぐ会えますから・・・」


俺は、そういって肩をやさしく叩く。

俺が慰めていて、何ともおかしな光景。

子供と離れて過ごすのが辛いらしい。

人間味のある優しい男だ。

外であったら、とても怖くて視線も合わせられないほどの顔をしている。

毎日話しているうちに気さくに何でも話せるようになっていく。


部屋でいつものように暇を持て余していた。

男のシャツの隙間から刺青がチラチラ見えるので思わず話し掛ける。


「ちょっと触らせてもらっていいですか?」


「ん?」


「刺青です」


「あ~いいよ」


そう言って、いきなり服を脱いでパンツ一丁になる。


「いや、そこまで・・・・」


(看守が誤解するんじゃん)


「よく見てくれよ」


「あ、はい。わかりました」


「結構、自慢の刺青なんだぞ」


立ち上がったまま一回転する。

俺は、刺青を間近で見て触らせてもらう。

そして、裸のまま座り込む。


「綺麗ですね」


「そうだろ?有名な彫り師の作品だからな」


「彫り師?」


「お前、刺青好きなのか?」


「ええ、まあ」


「彫ってやろうか?俺も彫れるんだぞ」


そういって自分の足に彫った刺青を見せる。


「これ、自分で彫ったんですか?」


俺は、それを見て思わず噴出しそうになったがグッと我慢する。







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