第49話 親友の死②

それ以来なぎさは家に閉じこもり、何週間も食事も取らずに過ごしている。

そのせいか、豊満なバストも見る影もなくなり骨と皮だけの痩せ細った身体になってしまう。


ゆうこは、しばらく家に行って世話をしている。


「なぎさ、何か食べないとあなたの身が持たないよ」


「・・・・」


「どうすれば元気になってくれるの?」


「ごめん・・・ほっといて」


「ほっとけないよ」


「いいの」


「私もあんたにずっと付き合ってられないのよ。限界なんだからお願い。」


「・・・・」


「仕事行かないと生活できないし、ずっとここにいるわけにもいかないのよ」


「いいから」


「じゃあ病院だけ一緒に行こうよ。ねっ」


「・・・わかった」


ゆうこは、なぎさを病院に連れて行く。

栄養失調。

入院させて、後は病院に任せる事にする。


俺も明日は我が身なのかという恐怖に襲われる。

親友の死は、あまりにも辛い出来事。

それでも店には出る事にした。

しばらくは、仕事にも手につかず全く接客できていない状態。


「遼、あんまり無理するなよ」


「はい」


「店は休んでいいんだぞ。ヘルプは気にしなくていいから」


先輩達も気持ちは察してくれて優しい。

赤坂だけは、厳しい言葉を掛けてくる。


「仕事は仕事。出勤して来たらしっかりやれ!」


毎日のように激を入れてくる。


「遼、赤坂さんは心を鬼にして言ってくれているんだからな」


相原が言う。


「はい、わかってます」


「赤坂さんは、仕事には厳しい人だから中途半端は嫌いなんだよ」


「はい」


「辛いのはわかるが、そろそろ性根いれて仕事しろ。休むなら休め!」


「はい、でも相原さん、みんなは、平気なんですか?」


「なんだ?」


「こんな短い年月で三人も身近の人間が死んだんですよ」


「そうだな」


「赤坂さんは何故あんな平気な顔していられるんでしょうか?」


「平気なはずないだろ。グループのトップだから仕方ないんだよ」


「そんなもんでしょうか?」


「わかってやれよ」


「わからないです」


「水商売は川の水のように流れが速いんだよ」


「・・・・」


「お客もホストも身も心も移り変わりが激しく速いんだ」


「・・・・」


「ホストやっていると1年が、普通の人の2年にも3年にも感じるんだよ」


「・・・・」


「お前も早く慣れろ」


「死に慣れろって言うんですか?」


「お前は、まだこの世界短いから知らないだろうけど、一年にホストは何人も死んでるんだよ」


「ほんとですか?」


「お客もそうだ。風俗の女の子は、事件に巻き込まれて殺されたり、行方不明になったりしてるから」


「マジですか?」


「たまにテレビのニュースに出てるのは一部だけで表に出てない事件がたくさんあるんだよ」


「なんか物騒ですね。この仕事怖いな」


「悪どい商売すると、よくない事が起きるのかもしれないな」


「わかりました。とりあえず、気にしない様にしてやってみます」


「いちいち気にしていたら身が持たないぞ。気楽にやれ」


「はい」


(気楽にって言われても無理なものは無理なんだけどねぇ〜)

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