第50話 親友の死③

しばらく仕事に出ても俺の気持ちがもやもやして変わらない。

それでも毎日出勤を続ける。


まわりのホストに励まされながらも接客を続けている。

しかし、仕事が身に入らず先輩達に迷惑をかけている。

俺は、しばらく休む事に決めた。


「店長、しばらく休ませてください」


「ああ、そうしたほうがいいよ」


「ありがとうございます」


「ゆっくり休んで、元気になって戻ってこい」


「はい、すみません」


俺は、それから部屋に入ったっきり、何日も外に出ず引きこもり状態。

毎日、後輩の隼人が食料を買って持ってくる。

出勤していない日が続く。


「すまんね」


「遼さん、みんな心配してますよ」


「うん」


「お客さんにも連絡しないと・・・」


「ああ。そうだな」


「みんな離れちゃいますよ」


「お前、連絡して適当に言っといてくれよ」


「俺が、何て言えばいいんですか?無理ですよ」


「わかったよ」


「遼さん来ないと、俺への負担が大きいんですよ」


「すまん」


「さらに一気に二人もいなく・・・あっ・・すみません」


「いいよ。気にするな」


「早く戻ってきてください」


「・・・・」


寝転んで天井を見ながら考える。


(このままじゃだめだよな)


俺は次の日、自分の部屋を解約する。

ゆうこの部屋に転がり込む。

ゆうこは何も言わず俺を迎え入れてくれる。

衣服だけ持って行き家財道具は、不動産屋に処分してもらう。


「ゆうこ、ありがとう」


「いつ迄でも、いていいよ」


そして、何日もただ漠然と日にちが過ぎていく。

日が経つにつれて、先輩達に顔を合わせ辛くくなり、店に出勤するのも気が重くなっていく。


店に電話する。


「赤坂さんお願いします」


赤坂が電話に出る。


「何だ?どうした?」


「電話ですみません。遼ですが、店を辞めます」


「はあ?何言ってるんだ?」


「すみません」


真樹の時のように、あっさりオッケーの返事がでない。


「隼人が、連絡取れなくなったって嘆いてたぞ」


「・・・」


「今、どこにいるんだ?」


「ちょっと・・・」


「女の家だろ?とにかく店に来い」


「もういいんです。辞めさせてください」


「おい!」


「・・・・」


俺は電話を切る。

店には、もう顔を出すつもりはない。



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