第41話 親友の客①
真樹も指名をとるようになって忙しくなっていく。
専属ヘルプで付いている先輩がお互いに違うから、プライベートの行動が別々になっていく。
俺は、先輩達の客よりも真樹の客を優先してヘルプに着くようにしている。
俺も先輩の客とのアフターが大変だが、真樹も仕事が終わってから赤坂や城の付き合いで忙しい。
ある日、真樹の客が愚痴っていた。
「忙しくて真樹が席に付いてくれないの」
「・・・・」
(俺もそうだけど仕方ないんだよね〜)
「私よりヘルプのほうが大事なの?」
「先輩の席だから仕方ないよ。すぐ戻ってくるから」
俺は、ずっと席でなだめ役。
どんどん酒が彼女の身体に入っていく。
もう一人では歩けないくらいの泥酔状態。
「真樹ー!真樹はまだー?」
「もうちょっと待っててよ」
店が終わっても一人では帰ることができない状態まで酔い潰れてしまい席に座って残っている。
真樹は、赤坂の大事な客とその枝の友人を、焼き肉店連れて行く事になっている。
赤坂は、他の客を送ってから焼き肉店で合流する事になっている。
自分の指名客がいるので断る事もできたのだが、赤坂の客の友人の女性が真樹を気に入ったらしく断われる様子ではない。
指名を取る為には仕方がなかった。
真樹の客は席で寝ている。
席にそっと来て俺に言う。
「すまん、俺の代わりにこいつをマンションまで送ってくれ。」
「いいよ」
「場所知ってるよな?」
「ああ」
普通ならこんな事はしないのだが、信用があるからこそ頼める事だ。
今日は、客も来てないし店が終わっても予定もないから送ってやる事にする。
俺も少し酔ってるが、思考回路はしっかりしている。
寝ている客を店から出してタクシーに乗せるのも大変。
真樹と二人で抱きかかえるようにして乗せるのが、やっとだった。
「おい、これ俺一人で降ろして部屋まで?大丈夫かな?」
「何とか、マンションの前で降ろしてくれ。後は自分で部屋まで行くだろう」
「わかった」
(マジで大丈夫か?無理だと思うけど・・・)
タクシーの中では寝言の様に真樹の悪口を叫んでいる。
「真樹のバカヤロー」
「うるさいな~運転手さんすみません」
「だいぶ飲んでるね~気持ち悪くて吐きそうだったら言って下さい。すぐ止めるから」
「ん〜吐くことはないと思うんで大丈夫です」
マンションの前に着く。
「運転手さん、ちょっとこのまま待ってて」
引きずり降ろしてマンションの入り口まで連れていく。
「大丈夫か~?一人で部屋行けるよな?」
「う~ん、・・・多分・・・だいじょうぶ」
今にも倒れそうな状態。
「じゃあ俺行くよ。ちゃんと歩けよ」
タクシーで帰ろうとして車に乗り込む。
窓から外を見ると、道路に座り込んでいる。
「お客さん、あれじゃあのまま寝ちゃうよ」
「確かに、あれじゃ一人じゃ無理だな」
(もお〜!しょうがねえな)
「運転手さん、俺もここで降ります」
仕方がないから部屋まで連れて行く事にする。
俺は、彼女のそばに行く。
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