第187話 デリバリー運転手④

「ばっかじゃないのって言った」


「そうだよな」


「でも・・・プラス一万くれるって言うからさ」


「え?」


(もしかして・・・)


「ドリンク飲んでからおしっこ溜めて、やる事やった後、思いっきりかけてやったんだ」


「マジで?」


俺は、その光景を想像しながら顔をしかめる。

女はそれを見て笑う。


「あははは」


「それで客は?」


「うれしそうな顔して思いっきり口あけて飲んでた」


「げっ〜」


「変態じゃないよって本人は言っていたけどね」


「ふ~ん」


(いや、変態でしょ)


「まあ、毎回違う子にも言っているから、聞いて知っていたんだけどね」


「みんな?」


「すっきりするからって聞いていたけど・・・あたしはちょっとね〜」


難しそうなしかめっ面。


「無理だった?」


「どうだと思う?」


「・・・・」


(どうって聞かれてもなあ)


「超~すっきり!あははは」


俺は、あっけにとられ愛想笑い。


「ははは・・・」


(なんなんだよ~全く)


「あれで役人だって言うから、人は見かけによらないのよねえ」


「役人なの?」


「霞ヶ関の偉い人みたいよ」


「ふ~ん」


「あの人も仕事で神経を使って大変なのかもね」


「うん」


(優しい事を言うんだな)


「お固い仕事ほどストレス溜まるんだろうね〜」


「なるほど」


「この商売ってある意味、人助けでもあるのかもね」


「ははは・・・」


(物は、言いようだ)


この仕事をしながら気付いた事がある。

女達は、みんな明るい。

そういう性格なのか、そうせざるを得ないのか。

今の俺には、まだ女達の気持ちを理解してあげる事が出来ない。


ある日、ラブホテルに行った女から急に迎えに来いとの連絡を受けて迎えに行く。

俺は、ホテルの入り口に車を横付けにする。

出口から慌てて女が出てきて、乗り込む。


「もう~あんな客無理!早く事務所戻って」


「あいよ」


(えらい、剣幕だな)


女はタバコに火を付け思いっきり煙を吸って吐き出す。

車の中が瞬く間に煙で充満する。

俺は、気付かれないようにそっと窓を開ける。


終始無言・・・。


(声かけづらいな)


少し走った所で女のほうから話し出す。


「遼ちゃんて・・・」


「ん?・・・何?」


「何も聞かないんだ」


「いや、落ち着くまではと思って・・・」


「ふ~ん」


「女の心理よくわかっているじゃん」


「そろそろ、落ち着いた?」


「そうね~もう平気かな」


「じゃあ聞こうか?どうしたの?」


「聞いてくれる?今の客、今までで超、超変態」


「そう?」


「今までいろんな男見てきたけど、あれは一番だね」


「どんなやつ?」


「うんち」


「うんち?」


(また、聞きたくない話っぽいなあ)



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