第167話 ホテトル嬢との同棲生活③
「何もないはずよ」
一人の捜査官が裏ビデオを発見。
「これは何だ?」
「あ~それですか?」
(やばっ!)
裏ビデオの作っている事務所にも出入りしていて、貰ってきた物。
業者との関係を知られると後々面倒だ。
「個人的趣味でーす」
「それにしては多いな」
「好きなもんで・・・」
捜査を続けている間、一人の刑事が俺に近づいてくる。
刑事が話す前に先に俺が聞く。
「これ、何の捜査?」
「わからない?」
「俺、何もしてないはずだけど・・・」
俺は、タバコに火をつける。
すると刑事がゆっくりと話しを切り出す。
「お前ホテトルをやっていなかったか?」
「働いていましたが、それが何か?」
(あ~その件か)
「違法な商売ってわかっているだろ?」
「ええまあ・・・でも今は、もうやってないっすよ」
「そうみたいだな」
「それで何故、俺が調べられるわけ?」
(どっちの店の事だ?・・・うかつに話さないほうがよさそうだ)
俺は、経営に携わった店と雇われて店長の店と、どっちの店の事か探りを入れる事にする。
「今はもう六本木には行ってないけど、何か店で事件でもあったんですか?」
「実は西麻布の店で事件があったので調べているのだよ」
(麻布のほうか・・・)
どちらもやくざ絡みだが、雇われの方でホッとする。
「それで何故、俺が家宅捜査を受けなくちゃいけないの?」
刑事は、会話中俺の目をジッと見ている。
(これって俺の様子を観察してるんだろうな)
「接客した女がサービスしないで金だけとってホテルから逃げてね」
「はあ・・・」
「お客が、店に対して苦情を訴えてね」
「まあ、ありがちな話ですね」
それが原因で、店が摘発されたらしい。
その店が暴力団関係の店という事で、ずいぶん前から目をつけられていたようだ。
「何人かの女の子から事情聴取したんだよ」
「へ~みんな捕まったんだ・・・かわいそうに」
あの頃の従業員の子達の顔を思い浮かべる。
「いや、捕まえたんじゃなくて出頭してもらって話を聞いたんだよ」
「あーなるほどね」
「そこで、君の名前が出てね」
「ふ~ん」
「君は暴力団関係者かな?」
「まさか、全く関係ないっすよ」
「ほんと?嘘はいけないよ」
「この俺のどこが暴力団に見えるって言うの?」
手を広げ刑事に改めて見せたが、寝起きで髭は生え髪は寝癖でひどい様子だ。
「人は見かけだけじゃ判断できないからね」
「まあどうでもいいけど俺は素人ですよ」
「電話を受けていた店長もお前の名前を出したから影のオーナーだと思ったんだけど」
「ふ~ん」
(あいつ、自分だけ免れようと俺の名前出したんだな)
刑事の態度が少し変化する。
俺に対しての呼び方が君からお前に変わる。
「どうなんだ?」
「俺、犯罪者ですか?」
「それは、お前の出かた次第だな」
「は?」
(どういう意味だ?)
話している刑事はメガネを掛けた穏やかな口調で話す男。
しかし、目の奥では人を観察している様な鋭い目つきをしている。
回りをよく見ると、他の刑事達もがっちり体育会系の目つきの悪い大男達の集団。
「刑事さん、この人達の方がまさしく本物のヤクザさんって感じじゃないですか?」
「あはは、確かにそうだ。みんな強いよ」
俺は、警察じゃなくやくざの襲撃と思ったほうがいいと思い直す。
暴力団相手の刑事課、通称マル暴と言われる人達だ。
「さてと、話はそれくらいで警察署まで来てくれるかな?」
「あ~いいっすよ」
「店をやっていたことに間違いないよね?」
「あ、はい」
答えた途端、そばにいた大男達が俺の傍に寄って集まる。
(何だ?)
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