第93話 ホテル住まいの女達④

後から相原とユカが歩いて付いてくる。


「あの二人うまく行くかな?」


「相原ちゃんなら大丈夫よ。あの人は、口達者だから」


「そうか、俺よりアリスのほうが付き合い長いから、よく知っているんだね」


「結構、やさしくて良い人そうだけど悪だから気をつけなよ~」


「へ~」


「最初は、やさしいけど自分の女になった途端に強きな男になるのよね~」


「詳しいなあ」


「あの強引さで、何人もの女が泣かされてきているから」


「ふ~ん」


「今日、相原ちゃんは、部屋まで送るのかなあ?」


「なんで?」


「ユカに一言だけ忠告しとこうかなって思ってね」


「ちょっと聞いてこようか」


「うん」


俺は、相原のそばに近づく。

俺が近づいてきたので、ユカは離れてアリスの横に移動する。


「相原さん、もう・・・いっちゃうんですか?」


「そうだよ」


「早いっすね」


相原の速攻には、いつもながら驚く。

アリスは、ユカにそっと聞いている様子。


「ユカちゃん、部屋に入れるの?」


「だって、行く行くってしつこいんだもん」


「彼は、強引だからね」


「悪い人じゃなさそうだし」


「バッカね~ホストにいい人なんて見た事ないわよ」


「そう?」


「ほどほどにしときなよ。まあ私も人の事を言えた義理じゃないけどね」


「ほんと。はは」


(あいつら、聞こえてないと思って勝手な事ばっか言いやがって)


そして、相原とユカは隣の部屋に入っていく。


「相原のいないところで言っときたい事あったのに、もう無理ね」


「手遅れって事か?」


「流されやすい子だから・・・」


次の日に客が来る前、待機していた相原の隣に座る。


「どうでした?」


「ああ、まあまあだな」


「まあまあって・・・」


(何がまあまあなんだろ?セックスの事かな)


相原は、タバコを吹かしながら座り直してこちらを向く。


「ああいう女は、すぐにやったほうが店に来るんだよ」


「そんなもんですか?」


「心の隙間が開いている時に入り込まないと、すぐ前の男に戻ってしまうからな」


「なるほどね~そんなものですか、勉強になります」


(まだその辺の見極めが、俺には無理だな)


そして相原の言った通り、ユカは次の日から毎日のように店にいる。

この店のホストよりも店に滞在してる気がする。

ユカの席で接客していると店長がやってくる。


「ユカちゃん、ここのどのホストより出勤率いいんじゃない?」


「あ・・店長。なんか、ついつい来ちゃうのよね~」


「今度タイムカード作っておくよ」


「ええ~そんな事されたら毎日来なくちゃいけないじゃない」


(もう毎日来てるじゃん)


「毎日、お待ちしております」


店長はフロントに戻る。


「ゆかちゃん、ほんとうにタイムカード作られちゃうよ」


「あはは、まさか。冗談でしょ」


次の日から一番下の段にユカのタイムカードが入っていた。

そして、店がオープンして以来、初めての出来事が起こる。





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