第61話 銀座の女③
俺は封筒を渡す。
「何これ?手紙か何かかしら?」
「今日、店に来たお礼に、何でも聞く約束だったよね?」
「え?」
「俺の願い事が書いてあるからさ」
「え~あの話って本気だったの?こわ~い」
「後で読んで。今は開けないでね」
「わかった」
「じゃ」
タクシー乗り場に着くと列ができてだがすぐに乗り込む事が出来る。
乗ってから後ろを振り返ると、まだ二人が立っていて俺を見て手を振る。
「見えなくなるまで見送りか」
(さすがだな)
俺は、窓から手を出し両手で大きく手を振り返す。
俺のその動作を見て二人は笑っている。
タクシーに乗ったその足で俺は店に出勤する。
まだ客も来てない店内に待機している席の隼人を見つけてその隣に座る。
「あ〜面白かった」
「遼さん、どうしたんですか?」
「ちょっと銀座で飲んできた」
「銀座ですか?またリッチな事をしてきましたね」
「ちょっとエサを撒いてきたんだけどね〜どうなる事やら」
「営業ですか?」
「ま、そんなようなもんかな」
週末にかおりから店に電話がかかってくる。
「遼ちゃんこれから飲みに行っていい?」
「いいよ。どうしたの?」
「店の子達にホストクラブの話したら行きたいって言うから連れて行くね」
「オッケー」
(これは、上手くいったってことか?)
かおりは、店の女の子を大勢引き連れて店に来る。
「あーホストだったんだ」
一人の女が叫ぶ。
「あはは、青年実業家のホストでーす」
かおりが、俺の傍に来る。
「もう、手紙なんて入ってなかったじゃない」
「ん?何?」
「外からじゃわからないように紙に包んであっかし、出したらお金が入っていたわよ」
「何の事やら。手紙がお金に変身したか?」
「そんなわけないでしょ!」
「それより、もう俺の正体バレバレだね」
「そうね。でも別にいいじゃない?」
「もう銀座の店には行けないな」
「そう?来てもいいんじゃない?」
「だめでしょ!同業者はお断りだろ?」
「そうだったかしら」
「普通、クラブの客に同業者お断りってなってるはずだよ」
かおりは、ヘルプの女達には口止めすると言っている。
(無理だろうな、誰かが言うさ)
俺は、かおりを店で出合わせてくれた指名者やその後輩達をヘルプで付ける。
かおりの後輩の子達も盛り上がり楽しんでいる様子。
結局、閉店までいた。
そして、会計。
団体なので一人で行った俺が銀座で支払った金額の何倍もの会計。
かおりは、何食わぬ顔で支払いをする。
帰りのタクシーを乗せるのに各々の女性に目を付けたホストが外まで見送り。
かおりが、みんなをタクシーに乗せて見送ってから最後俺と二人が残った時に耳元で囁く。
「今度プライベートで会わない?」
「え?いいけど・・・」
(いきなり、どうしたんだ?)
「ほんと?」
「いや、こっちこそ嬉しいくらいだよ」
「じゃあ・・・」
かおりの言葉を遮って
「じゃ、今からかおりの部屋に行こう」
「え?今から?」
「善は急げ!だよ。明日、店は休みでしょ?」
かおりは、困惑顔。
「何かまずいことでもあるの?」
「・・・・・」
かおりは答えない。
「店にこのまま帰るって言ってくるから待ってて・・なっ!」
手を合わせ拝むような仕草をする。
「え~ほんとに来るの?」
「いいだろ?」
「今から家はちょっと・・・」
「まあ、いいから、いいから。それとも男でもいるの?」
「いないけど・・遼ちゃんの家は?」
「先輩や他のホストがいるから無理だよ」
「そうなんだ」
「とにかく待ってろって」
半ば強引。
今から部屋に行っても早朝だし、きっと寝るだけになるだろう。
タクシーで、かおりのマンションに向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます