現実a-2
駅前広場に移動する頃には柊も落ち着き、俺達も周りを見回す余裕が出来る。駅前の掲示板には乱暴にセブンスサインと英語で書かれ、円に六芒星の点の部分に眼が描かれたポスターが乱雑に貼られていた。それを見て則夫が思い出したように言い出す。
「そういえばみんなはMMOとかやんないの? 今、スゲーハマってるゲームあんだよ! 『アーマゲドンオンライン』ってゲームなんだけどさ」
「ん~そーいや聞いたことあるような無いような……」
そういえば最近、妹が晩飯の時にそんなゲームが流行ってるとか話していた気がする。
「今、暴食の啓示イベント始まってるんだよね、ああ、こんなとこで時間潰すくらいなら早くイベント行きたいわ!」
則夫はまるでマシンガンのようにハマッてるゲームに語り始める。すると、悠紀夫は興味を示したようだ。
「で、どうなんそのゲーム、魔王とか倒しにいくの?」
「そんなゲームいまさら流行んねーよ。7つの大罪の封印をといて世界を終末に導くんだよ」
「何それ? 主人公は魔王側なん?」
「いやいや、魔王側とか人間側とかですませられる、そんな単純なゲームじゃないんだよ。基本的にはそれぞれの大罪に封印されてる魔王達を開放していくんだけどな」
「なんだよ、つまり悪役側ってことじゃん」
「だからそんなに浅く考えられるゲームじゃないんだって。特別なイベントでは世界同時タイミングで封印を解く儀式をしなきゃいけないらしいぞ。すごくね?」
ん? 気になる言葉が出てきたぞ? すこし突っ込んで聞いてみたくなったので悠紀夫の話をたちきり則夫に少し聞いてみる。
「世界同時タイミングで封印を解く儀式って可能なのか?」
「もちろん可能さ。今、世界に600万人以上がプレイしてるゲームなんだぞ、各プレイヤーには時差まで告知してそれぞれ各国現地サーバーを連動させて同時に儀式をおこなうんだ」
「そんなこと可能なのか……すごいな。つか、らしいってどういうことだ?」
「ああ、実はまだこの封印、強欲の封印しか解かれてないんだ。俺は封印解除に初参加なんだよ」
「なんだ、まだやったこと無いのかよ。どうせなら最初から参加して語れよな」
「仕方ないだろ15日前の強欲の封印解除以来ものすごい勢いで流行り始めたんだから。あれでプレイヤーが倍近く増えたって話だしな」
「封印解除ってそんなに凄かったのか?CGが凄いとか?」
「いやそんなもんじゃないらしいぞ。なんでも目の前の世界が割れる感覚がしたって噂だ」
……こいつは何を言ってるんだ? 世界が割れる感覚? 電子幻覚剤か何かでも入ってんのか? いやここは友人として生暖かく見守ってやるのが正解なのだろうか?
「うん…まあ、ゲームの楽しみ方は人それぞれだよな…」
こう言ってやるしかない、俺はそう決めたが、しかしそれに悠紀夫が飛びついてしまった。
「ウッソ! マジで? それ合法の麻薬みたいじゃん」
なんて例えしてんだこのバカは。
「ちょっと興味沸いたわ。今始めるならどうすりゃいい?」
「お、飛びついたな。今からならメイン職をダークオーダーにしてサブ職にエビルプリーストをつけると攻守で活躍できるぞ」
「マジか。後でゲームのURL送ってくれよボイスチャットできるん?」
「当然だろ。フレ登録すればボイチャできるぞ。一緒にまず俺とやって、いずれギルド組もうぜ」
則夫の話に悠紀夫が飛びつき夢中になって話している。柊はつまらなそうにスマホをいじってるので話しかけてみる。
「柊はゲーム気にならないん?」
「ああ、俺はあんまりゲーム興味ないし、こう見えてもサッカー部員だからゲームに集中する時間も無いしな」
「そんなもんか、まあ俺もあんまり興味無いしな」
眠りさえすればそんなゲームより素晴らしい冒険が待ってるのは秘密にしておく。ヤバい奴扱いもヤだしな。そんな他愛もない話をしてると駅前のスピーカーから夕焼け小焼けのBGMが流れる。もう5時だ。別に門限がある訳では無いが早めに宿題を終え風呂と夕食を済ませて、あのファンタジーの世界に行きたかった。
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