夢d-3
「オーガの討伐依頼が来てるぞ。証拠の納品、オーガの角25本で9000オーロだ。ここんとこ1番デカい依頼になるな」
全くもって桁違いの難易度だ。そんなの人間に可能なのだろうか?
「じゃあ、それで。香苗、鈴木が来次第出発するからな」
「そんなの解ってるわよ、一々言わなくていいから、ウザったい」
新堂は彼氏に対しても辛辣なようだ。それにしてもあんな依頼、二つ返事で受けるとは。マスターも実績と実力のバランスを考えて依頼を斡旋してるんだろう。もしかしたら俺達にも出来ると考えているからそうしてるんだろうが、悩んでいると来栖先輩が不意に声をかけてきた。
「悩んでるならやってみた方が良いと思うよ。その悩み様だとウェアウルフ相手かな? なら同じチュレアの森方面だから、場合によってはこっちでもフォローするよ」
この人、オーガ相手にしながら他人のフォローまでできるのか。もはや驚くを通り越していた。しかし新堂がそこに割り込む。
「1戦フォローで100オーロね。タダで助けて貰えるなんて甘いこと考えないでよね」
確かにタダってのは虫が良すぎるか。しかし100オーロはキツイ。せめてもう半分くらいに負からないだろうか……。だが来栖先輩はそれはと更に割り込む。
「香苗は金金うるさすぎだ。義を見てせざるは勇無きなり。昔教わったろ? 後輩のピンチなら助けてやらないとな」
「来栖はお人よし過ぎよ。昨日だってあんだけ闘ってボランティアなんてバカバカしいにも程があるわ。こっちは命懸けてんのよ。適性な報酬はもらうべきだわ」
「あれくらい問題無いよ。俺の剣はデカいからな。届くものは全て守れる」
そう言うと新堂は黙ってしまう。カッコイイな来栖先輩。これは新堂が惚れるのも解る気がする。なんだか聞いてるこっちも勇気が貰えるようだ。こんな人を勇者と呼ぶのかも知れない。そんなやり取りを見ているとがっしりして重そうな鎧兜に大きな盾を持った大柄な人が入ってきた。
「来栖先輩すんません。遅れました」
「いや、今、依頼受けたばかりだから問題無いよ」
多分この人が鈴木さんなんだろう。武器は支給品のダガーと短めのモーニングスターのみ。見るからにみんなの盾と言う感じだ。これで来栖先輩のパーティーは揃った。
「じゃあ、みんな行こうか。タツヤ君、柊君、チュレアの森で再会するのを楽しみにしてるよ」
それだけ言い残すと3人は出て行った。実に爽やかな人だった。
「カッコイイな」
柊は思わず感想を漏らす。確かにあれはカッコイイ。俺達もああなりたい物だ。後姿を見送ると、ニジエが駆けこんできた。
「おはようございます。すみません。待たせちゃいましたか?」
「おはよう、大丈夫だよ。今、柊と今日の依頼どれにしようか考えてたとこ」
「お、ニジエさんおはよう。今日もいい感じですね」
何がいい感じなのだろうか、いやコイツの言うことはスルーでいいか。それより今は今日の依頼に関してだ。どうしたものか……。
「実はマスターから討伐依頼が来たんだ。モンスターはウェアウルフ。納品数は爪を20本。1500オーロと報酬も悪くない。報酬は三等分する。どうかな? 2人の意見を聞きたい」
来栖先輩とのやり取りを見てから、俺はこの依頼を受けたくなってきていた。だが2人はまだ初心者だしキツイかもしれない。ニジエは本で知ってるだろうから尚更だろう。だが帰ってきた返事は意外なものだった。
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