夢k-11
「しかし、乗り心地はもう少しなんとかして欲しかったわね」
新堂の文句が出る。
「生憎、俺は厄介な荷物を4つカ―チンガに届けるだけだ。乗り心地は料金に入って無いんでな。それと、トイレなんてカ―チンガまでないからな。したい奴はタラントに近づくまでにその辺で済ませてくれ」
これも仕方ないか。どうせ、いつもチュレアの森でも済ませてたし、みんな問題無いだろ。
しばらくすると声がかかる。
「そろそろ、タラントだ。樽の乗せ換えをして、補給をしたら一気にカ―チンガを目指すぞ。欲しいんなら、金貨を1枚追加で情報をしいれてやる」
払おうにも俺にはもう金が無い。だが情報は欲しいな。新堂の顔を見る。
「追加するわ、正し有益な情報ならね」
「商談成立だな。何、詐欺師の集まりは情報が何よりの命だからな。期待していいぜ」
ああ、また借金がかさむ。そういえば新堂の剣、俺達が金出したんじゃないか?
「おい、新堂、武器の分返せよな」
「あれはパーティーの戦力強化よ」
「なら、移動費も情報料もパーティーの分だろ」
「分かったわよ。金貨3枚分借りとくわ」
自分にもシビアなんだな。新堂に貸しが出来てなんだかスッとする。馬車の速度が落ちる。どうやらタラントに着いたみたいだ。馬車が止まり、ジェイムズが声をあげる。
「ルンレストの冒険者から、飲料水のプレゼントだ。村のみんな、運び出すのに手伝ってくれないか?」
どうやらジェイムズは俺達に聞こえるように大声で話してるようだ。馬車から樽が下ろされる。以前見たタラントの規模なら、飲料水8樽は有難いだろう。空の樽を乗せるとバレないように待つことになる。ジェイムズは食料の買い出しにいったようだ。しばらくすると一抱えもある大きな麻袋を持って、ジェイムズが乗り込んできた。
「情報集まったぞ、タラントは被害軽微だが、カ―チンガは、ほぼ壊滅だそうだ」
「なんでタラントは大丈夫だったんだ?」
「どうもガーゴイルが素通りしていったようで、ウェアウルフくらいしか強いのは出なかったらしい。憶測も混じるが、ガーゴイルはカ―チンガを滅ぼして、ルンレストに一直線に向かったんだろうな。金貨もう1枚追加で向こうで必要そうな物資を調達してやるよ」
コイツやっぱり悪党だ。随分吹っ掛けるな。
「分かったわ、向こうで外泊に必要な聖水3日分と歩いて帰るのに必要なマモーラとドライフルーツを買いこんで来て」
「毎度あり……」
どう考えても10倍近い値段だが文句は言えないだろう。俺達は今、外に出られないのだから。
また時間がたつ。馬車に乱暴に荷物を放ると、馬車はまた動き出した。これからカ―チンガか。壊滅と言われたが、恐らく、調査されたらマズイ何かがあるに違いない。優さんは無駄を好まない筈だ。また、ケルベロスやサキュバスクィーンの様な化け物と遭遇するだろう。考えているとジェイムズから声がかかる。
「もう、タラントは離れたぞ。声を出していい。ちなみにカ―チンガで補給出来ない分、聖水2袋追加したから、金貨もう1枚追加な」
これで貸しが金貨1枚分に減ったか。仕方ないことだらけだ。現実でも夢の世界でも、金に困るとは。新堂が声を出す。
「ちょっと、勝手なことしないでよ。その追加は無効よ」
「なら、ここで俺の気が変わって帰るのもアリだ。甘くみるなよ。ここから先、俺も命がけなんでね」
「分かったよ。払うからカ―チンガに向かってくれ」
「ちょっと陽菜、何勝手なこと言ってんのよ」
「どちらにせよ行かなきゃならないんだ。金で済むなら安いと思おう、時間は買えないだろ」
「それはそうだけど……なんだかシャクに触るわね」
もし行き先が壊滅してるなら、金は無意味だ。なら時間を買う方が良い。稼ぐのは帰ってからいくらでも出来るだろう。もう日が傾いてる。今夜には着くらしいが、後何時間必要なんだ? 帰りは徒歩でタラントまで帰らないといけないから、随分かかるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます