夢i-3
「案外小さいじゃん」
「これ、4人じゃ少なすぎないか?」
「分かってないな~、午後のお茶もあるんだから、お腹いっぱいにしちゃだめなんだから~」
成程、イギリスのアフタヌーンティーはかなり大仰な感じだった気がする。それに近い文化もあるのか。
それぞれの皿に取り分けて食べる。肉は味が染みており、ペンネのチーズがそれを際立たせ、サラダがサッパリとさせる。なかなか食べ合わせがいい。出来ればもう少し食べたかったがアフタヌーンティーを考えると丁度いいのかもしれない。食べ終わり、皿が下げられると、15オーロを支払い、ティールームに向かう。こちらは先ほどの食堂より高級感のある店だった。
「すまんレベッカ、メニューがよく解らないから頼んでいいか?」
「仕方ないな~、でも日替わりメニューで頼んじゃうよ」
「ああ、ニジエはなんかリクエストある?」
「私は特には。もうあんまり食べられそうにないので」
「ニジエ~、ここのお菓子は評判良いんだよ。来たら1個でも試しに食べてみなよ~」
レベッカに言われ、日替わりティーセットを頼むと、大きな三段重ねの銀盆に色とりどりの一口サイズのお菓子と、ジャムやクロ―デットクリームなどが運ばれて来た。大きなティーポットもある。これは確かに昼を少なめにして正解だ。スコーンを手に柊が聞く。
「これ、どうやって食べればいいんだ?」
「半分に割ってジャムとか付けて食べるんだよ~。おススメはクロ―デットクリームかな~」
柊は半分に割り、濃厚そうなクリームを付けてオープンサンドのようにして食べる。
「うめぇ~! これマジ濃い! 陽もニジエさんも食べてみ」
言われて俺はスコーンを半分に割り、片方をニジエに渡すとクロ―デットクリームを付けて食べてみる。バターとクリームの中間のような味だ。これはいい。ジャムを一緒につけても合いそうだ。
隣を見るとリスのようにニジエはスコーンを食べている。
「なんだかこれ味がしませんね」
「それはそうだよ~。スコーンに味付けなんてされてないんだから」
見た目は甘そうに見えるからな。間違えても無理は無いか。ニジエが知らないとは意外だったな。改めてクロ―デットクリームと苺ジャムを塗り食べると綻ぶような笑顔になる。相当気にいったようだ。
「しばらくしたら、ユウヤとタツヤの服を取りに行こうね~」
「何時間ここにいる気なんだ?」
「午後のお茶はゆっくり時間をかけて楽しまないと~。時間なんか特に気にしないんだよ~」
分単位で生きる日本人には定着しずらそうな文化だ。だが、こういったくつろぎの時間もいいのかも知れない。学校とかでもこんな文化出来ないかな。
お茶は足りなくなる度に足してくれるようでいっこうに減らない。お腹がタプタプになりそうだ。ニジエもあんまり食べられそうに無いと言いつつフルーツの乗った小さなパイを口に運んでいる。こんなにリラックスした時間はこっちの世界で初めてじゃないだろうか。俺もビスケットに生クリームと苺が乗った菓子を頬張る。柊は余程クロ―デットクリームが気に入ったのか、さっきからどの菓子にも塗りながら食べている。ダブルデートは成功のようだ。レベッカがいなければ時間を持て余してしまったかもしれない。銀盆が全て空になる頃、長いお茶の時間は終わりを告げた。20オーロを支払う。レベッカめ、普段来れない店に案内したな。まあいいか。デート代なら安いものだ。これで、デートは終わり、時間は夕方の鐘まで1時間くらいか。
服を取りに行こう。レベッカの知り合いの店は腕は確かなようでピッタリだった。このまま着て行こう。着替えるの面倒だし。柊もタキシード姿なのだが、坊主頭とのギャップに思わず笑ってしまう。
「しかたねーじゃん。サッカー部も空手部も坊主じゃなきゃいけないんだから」
確かにそうだ。後はニジエとレベッカだが、ニジエは一旦帰り、夕方の鐘が鳴る頃、着替えて青銅の蹄に来るそうだ。レベッカは昨日既にドレスを受け取り、迎えが来る頃着替えてくると。
俺と柊は手持ち無沙汰になってしまった。服に皺や汚れを付ける訳にはいかないし、どうしたもんだろう。
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