夢d-2

「いや、気分転換に鶴見駅に行ったら偶然会ったんだよ。お前は蹴りの練習してるって言ってたし、邪魔しちゃ悪いかと思ったからさ、そしたらばったり悠紀夫と鉢合わせしてさ」

「何の気分転換だよ。何か悩み事でもあんのか?」

「アーマゲドンオンラインとこの夢の世界の関連性について。符号する点が結構あったんだけど、悠紀夫の話してる感じだとやっぱり無関係かなってさ」

「ああ、昨日言ってたあれか。ノリからスマホ版やれってメッセ来てたな。しかし、中々ぶっ飛んだ考察をしてるな。でも関係無いならほっといて俺達は俺達で楽しんだらいいんじゃん」


 なんともシンプルな答えだ。だが柊の言うことも1理ある。無関係なら無関係として楽しめばいいのだろう。気になっていたパリンの音は偶然に違いない。そう結論付けると、まだ柊は聞きたいことがあるようだ。


「で、お前、ニジエさんと何話したんだ?」

「本当に取り留めも無い話だよ。ニジエは目が見えないから何でも珍しいみたいでさ」

「え? そうなのか? でも昨日は普通にしてたじゃん」


 コイツの忘れやすさはどうにもならないな。


「あれ? 言わなかったっけ? 虹江は現実では盲人なんだ。でも俺のことは不思議と見えるようでさ」

「なんだそれ? 運命の相手だからとでも言いたいのか?」

「それが他の人も少し見えたりするらしいんだ。今度、柊にも会わせるからニジエから見えるかどうか確認に付き合ってくれよ」

「それくらい別に構わないよ。それに美女と過ごせるなんてラッキーじゃん」


 本当に花畑並みの思考だ。他にも様々な休日のことなどを話していると、扉が開く音が聞こえた。ニジエかと思い顔を向けるとそこには見たことのある、身の丈ほどもある大きな剣を携え鎧で身を固めた筋肉質で長身の男性と、軽鎧を着てサーベルを腰に下げた2人組が入ってきた。

 間違いない。あれは来栖先輩と新堂香苗だ。来栖先輩の顔はあまり見たことは無かったが、新堂の顔は忘れる訳も無い。恋人同士、仲良く夢の中でまで一緒とは羨ましいことだ。気付いた柊が来栖先輩に挨拶をする。


「始めまして、サッカー部1年の柊雄太です。来栖先輩の噂は伺ってます」

「おや、同じ学校の後輩かな? 1年なら香苗は知ってるんじゃないか?」


 新堂はこちらをまじまじと見ると不意に声を出した。


「そっちの坊主頭の人は知らないけど、こっちの戦士みたいな人は知ってるわ。クラスメイトだもの。確か陽菜だよね?」

 

 新堂は俺のことを知っていたのか。というか結構なれなれしいな。せっかくなので俺も挨拶をすることにした。


「またお会いしましたね。改めて、陽菜達哉です。新堂とはクラスメイトです。よろしくお願いします」

「確かこの前、ウェアウルフの爪を譲ってくれたよね。俺は蒼馬 来栖(そうま くるす)しかし驚いたな。同じ学校の知り合いとこんな世界で出会うとは」


 俺も驚きだ。まさか新堂までこの世界にいるとは。また共通点でこんがらがりそうだ。ニジエは同じ学校の訳無いし、また悩みが増えてしまう。なんか関連性は……。


「何? 陽菜。なんか悩み事?」

「ああ、来栖先輩と新堂はいつ頃こっちに来たのかなってさ」

「私達は16日くらい前かな。寝たと思ったら草原にいてびっくりしたわ」


 俺やニジエと来たのは同じ頃だ。やはり偶然なんだろうか。柊は興味津々とばかりに言葉を続ける。


「来栖先輩は2人だけのパーティーなんすか?」

「いや、後、レスリング部で2年の鈴木 浩二(すずき こうじ)ってのと3人だな」

「その鈴木先輩も俺と同じ格闘士なんすか?」

「違うよ。盾を持って攻撃を防ぐ役目をしてもらってるよ。流石にレスリング部だけあって踏ん張りが利くから、こっちは安心して攻撃に集中出来るんだ」


 なるほど所謂タンク役という訳だ。その編成なら確かに連携がとりやすそうだ。シンプルだが強いのも納得がいく。また新しい人物が出てしまい俺はもう思考を放棄することにした。


「もう少ししたら来ると思うんだけど、そっちは確か魔術師の子がいたんだっけ。その子待ちかな?」


 俺は答える。


「ええ、揃ってから依頼決めようかと。ちょっと難しめの討伐依頼受けるか迷ってて」

「討伐依頼か、報酬いいよね。多分昨日襲撃があったから、それに対するモンスターの間引きって所かな。マスター、俺達にも丁度いい依頼ないかな?」


 大きな声で来栖先輩が尋ねると、マスターはさあ来たとばかりに依頼を告げる。

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