現実g-2

「それにしても告白って一方的で自分勝手よね」

「そういうなよ。する側は勇気振り絞ってるんだから」

「言いたくもなるわよ。私、この手紙全部に目を通して断りの返事しなきゃいけないんだから」

「意外に律儀なんだな。新堂ならごみ箱に捨てるもんだと思ったぞ」

「そんなこと出来る訳無いでしょ。手紙に返事を出すなんて常識よ」


 そんな良識持ち合わせてたのかこの女。


「これも、これも、また昼休み校舎裏に来て下さいか……会うのは気が重たくなりそう。なんか返事専用ボックスでもあればいいのに」


 滅茶苦茶言ってやがる。どうやら昼も放課後も校舎裏には長蛇の列が出来そうだ。


「ハッキリいってこんな手紙出してくる時点で論外だわ。男なら男らしくハッキリ伝えなさいよ。ああ、これ自作の詩まで載ってる……」


 苦労してみんな手紙書いたんだろう。ラブレターの差出人、自作の詩が黒歴史にならないことを祈ろう。

 忙しそうに手紙に目を通してる新堂を見てると予鈴がなった。悠紀夫がまた駆け込んでくる。これはいつもと変わらんな。教師が入ってくると急いで皆自分の席につく。この光景だけは変わらないような気がした。そして気だるい授業も。

 昼安みの学食は昨日とうって変わって閑散としている。何があったんだ? 柊は相変わらず早めに来ていたが、席を取っておく必要も無さそうだった。いつもの4人で座ると話は自然と昨日の夜の封印解除の話になった。ノリはカツ丼を食べる手を止め興奮気味に話す。

 

「いやあ、昨日の封印解除も最高だったね。また意識飛んじゃったよ。BBSでも意識がぶっ飛ぶって話題が絶えないな。ヨーロッパの方では学校で気絶者が多発して凄かったらしいぜ」


 それは危険すぎやしないか? なんなんだアーマゲドンオンラインって、只のゲームじゃないのか?


「そんなことになったら規制でもかかるんじゃないか?」

「それが教師も問題視しなかったらしい、まあ、魅力的なものは認めるしかないんだろうな」


 そんな一言で片づけていいのだろうか? 普通社会問題になるんじゃないか。悠紀夫も興奮気味に語る。


「陽、お前も今からでもいいから始めた方がいいって。絶対ハマるからさ」

「悪いけど忙しくてそれどころじゃないね」


 嘘は言って無い。特訓に虹江との会うのに、更に夢の世界と、時間はいくらあっても足りないのだ。


「忙しいと言えば今日の校舎裏の話聞いたか?」

「新堂が告白受けまくってるんだろ? 本人が苦労するって言ってたよ」

「お前、香苗とそんなに仲良かったっけ?」

「最近、ポツポツ話すくらいかな」


 新堂も話す相手がいないのか、昨日から朝はよく話相手になっていた。悠紀夫が続ける。


「で、お前はコクらないわけ? 前気になるって言ってたじゃん」

「そんな気にならないね。てかいつの話だよ。」

「まだ1か月経ってないぞ。今はあの神崎って子に夢中なのか」

「だから、友達だっていったろ。な、柊」


 マイペースにコロッケ入りの蕎麦をすする柊が返事をする。


「ああ、虹江さんは良い仲間だよ」


 一言話すとすぐに箸をコロッケにつける、そう言えばノリも悠紀夫も食べるペースが遅いな。昨日はあんなにがっついてたのに。


「なんか、お前ら食べる量少なくなってないか?」

「ああ、なんだかあんまり食欲なくてな。なんでだろう?」


 それはこっちが聞きたいくらいだ。ノリに至ってはいつものおかわりすらなくなっている。どうしたんだろう?


「ノリ、いつものラーメンおかわりはどうしたんだ?」

「それなんだが、ちょっとダイエットしようと思ってさ。やっぱり女子の目とか気になるじゃん」


 コイツからそんな言葉が出るとは。校内の浮ついた空気に飲まれたのか?

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